月白の本~小さな不思議の物語~

つきの

(序章) 月白の本

 ここに一冊の月白げっぱく色の本がある。うっすらと青みを含んだような白が美しい。

 シンプルだがしっかりした丁寧な装丁。

 四六判の大きさ。


 でも表紙を開いても、中には何も書かれていない。


 ただメモ用紙が、しおり代わりの様に挟んであるのが見える。

 本の横には古ぼけた万年筆が一緒に置いてあって、そのメモ用紙には濃紺ブルーブラックの文字で

☾【月白げっぱくの本】1ページだけを、あなたの自由にお使いください。つむがれた夢の欠片かけらは差し上げます ☽

 と書かれていた。


 昔からの住宅やアパートが続く道の真ん中辺り、奥まった所にある、小さな公園。

 ペンキが剥げかけたベンチの上にその本と万年筆は置いてあった。

 まるで何気ない忘れ物の様に。


 好奇心に駆られた誰かの手に取られることを願うように……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る