第10話 おっさんよ

 頭に血がのぼったおれは、家を飛び出していた。


 先日の台風の余波で、また雨が降ってくる。その雨を身体中で感じながら、おれは、自分の気持ちにはっきりと気がついた。


 おれは、おっさんが好きだ。バーコードヘアで、腹が出ていて、ちいさいのに三頭身で、酒ばっかり飲んでいて、一週間も便秘していたことを隠して熱出して。


 ほんっとうに迷惑っ。……なのに、好きなんだ。


 なんなんだよ、まったく。どうしろって言うんだよっ。


 はげしい雨に打たれながら、空を見上げた。冷たい雨だった。


 ◆◆◆


 本気で頭を冷やしてきたおれに、神様は冷たい言葉を吐いた。


「おっさんの生活があまりにも不規則すぎて、心配じゃ。しばらく神社で預かり、規則正しい生活を送らせようと思う」

「そんなっ、突然そんなこと……。おっさんは? おっさんはそれでいいのか?」


 また、離れ離れになるなんて。せっかくこの気持ちに気付いたのに。


 ある意味ですっきりしたおっさんは、おれを見上げて小首を傾げる。


 乙女かっ!


「青年よ。これが永遠のわかれではない。冬には戻って来れるよう、がんばるから」

「そしたらっ!!」


 のどがひりつく。うわずった声しか出てこない。


「そしたらもう、寒くなってるじゃん」

「うん? 暖冬かもしれないし?」

「水槽でおよげなくなるしっ」

「人間用の風呂なら、いつでもプール代わりになる」

「だからっ!!」


 そうじゃないっ。行くなっ。行かないでくれよっ!!


「青年よ、わかってくれたまえ。わたしはここにいると、つい甘えてしまうんだ」


 その時ふと、母さんを見た。なんらか・・・・の矛盾点に気がついてしまった。


 つづく


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