第7話 命の選択

 おっさんが熱を出した。普通の人間じゃないから、体温計の温度はあてにならないと思うけど、三十九度あった。


 ふーふーと息を吐きながら、苦しそうに眠るおっさんを見ていると、いてもたってもいられなくなって、神社へと向かっていた。


 こんな時にのんきに神頼みなんてするつもりはない。


 おれは、本物の神様におっさんを助けてもらうつもりできたのだ。理不尽だってかまわない。わがままだとののしられてもかまわない。おっさんが、おれのおっさんが元気に水槽でおよがないなんて、あっちゃいけないっ!!


 ああ、ひょっとして水質が体に悪影響を与えていたのだろうか?


 なにか食べさせたらいせないものを、食べさせてしまっていたのだろうか?


 わからない。わからないけど、とにかく昨日までおっさんは、普通に焼肉食べて、焼酎を飲んでいた。


 朝、起きたら、おっさんに熱があると母さんに聞かされてあせった。


 人間用の体温計を口で測ってもらって、もっとあせった。三十九度ってなんだよ!?


 そんなの、命に関わるんじゃないのかよ?


 ちょっと風邪ひきましたってのと、わけが違うじゃないか。


 だって、おっさんは、ちいさいおっさんなんだぜ?


 医者に診せるわけにもいかない。おっさんの存在を知られたくないから。


 おっさんは、おれたち家族と神様だけの秘密の存在なんだ。


 気がつくとそこにいた、そんな自由な存在なんだ。世間にバレたら、どうなることか!?


 そんなの、絶対にダメだっ。


 荒い呼吸を整えて、神社に参拝しながら、心で神様に呼びかける。


『すぐ行こう』


 神様の声が頭に直接響いて、おれはまた自宅へと走っていた。


 つづく

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