第5話 この胸のときめきを〜

「時に青年。おっさんへの思い気づいたようじゃが、告白はせんのかの?」

「ぐはっ」


 おっさんと神様をツマミに、炭酸ジュースを飲んでいたおれは、盛大に吹き出した。


「きたないのぅ」

「だって、神様!? なんてことを」

「ちょっとおっさん、借りるわよー」


 母さんはなにも聞かなかったようにおっさんを連れて作業部屋に入った。おそらく、ハロウィンの衣装合わせだろう。でも……、聞かれた?


「案ずるでない。母親とは、見守るものじゃ。おぬしを見ておれば、その気持ちはわかる。わしはこう見えても神じゃぞ?」


 そうでした。神様たる者、理不尽に恋愛成就を祈願されることも多いだろう。変に嘘をついたところで、すぐバレてしまうだろう。おっさんは母さんに連れ去られた。恋の相談なら、今しかない。


 と、いうことで、観念した。


「そうは言っても、どうすりゃいいんですか? おれ、こんな気持ちになったの初めてなんですよ? それに……、それに、神様だって、おっさんのことが好きなんでしょう!?」

「好きは好きじゃが、青年のとわしのは好きの種類がちがうぞ。まさか、わしを恋敵とでも思っておったのかの?」


 図星を突かれて、二の句が継げない。ああ、なんてはずかしいことを思っていたんだ。


「わしにとって、おっさんは、同士のようなものじゃ。互いに癒えぬ孤独を分かち合う存在じゃ」

「でも、一度はおっさんを連れて行ったじゃないですか」


 不注意にもおれが、小さくなる機械を使ってミニマムサイズになろうと提案したところを神様にバレて、おっさんは神社に連れ去られたのだった。


 あの後、数週間でおっさんは帰ってきた。


「それは、一時的に仲間が欲しかっただけの話じゃ。わしらはおなじような存在でありながら、ちがう価値観を持っている。じゃから、おっさんを自由にしたのじゃ。わざと叱って追い出したのじゃ」


 それは、おっさんが不憫だけど。神様の孤独もわからなくもない。


「それに、青年にはおっさんが必要じゃろう?」


 必要……。そう言われて、おれは自分がわからなくなる。この胸のときめきは一体、なんなんだろう……。


 つづく

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