およげ、おっさん!

春川晴人

ファーストシーズン

第1話 まいにち、まいにち♪

 アクアリウムにはまっている。


 結構お金をかけた水槽には、グッピーが優雅におよいでいる……、はずだった。


「きやっ、きゃ♪ うふふ♫ どぼーん!!」

「おい、おっさん。水槽でおよぐなって!」


 おれの家には、代々ちいさいおっさんと呼ばれる、ナゾの生命体が住んでいる。


 家族はそれを少しも不思議に思わず、それどころか、最高のおもてなしを提供しているわけだが、しかし。


 暑いからって、おれの水槽でおよがないでくれ!


「あら? おっさん、ごきげんね」


 ことの発端は、母さんがおっさん用の水着を作ったことから始まる。


「せっかく暑いんだし、水着くらいなかったら、さみしいわよねっ」


 歌うように母さんは言ったけれど。


 しかし、おっさんを連れて、プールに行くことはできない。ナゾの生命体が見つかったら、解剖されかねないからな。


 かといって、海は言語道断。ちいさいから、どこに流されていくかわかったもんじゃないからな。


「見てくれ、青年っ! グッピーに乗ったおっさん!」


 ……見たし。乗るなや。


「いやっほぉー!!」


 まぁ、それでも、ポコンと突き出たお腹をゆすらせておよぐおっさんを見ているうちに、なんだか癒されているような、そんな気がしたんだ。


 ……でも、グッピー死ぬから、そのぐらいにしてね?


 つづく

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