お食事のご用意なのです!


「こんなもん…」

「頑張って作ったのです!じゃんじゃんおかわりしてください!」

そういう問題じゃない。

セレーネの前に置かれていた数々の料理はすべて、黒焦げだった。

「こんなもんくえるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「へぴっ!」

驚いたルエはおかわり分の食器を落とした。

ぱりーーーん

「おい、それ最高級のだぞ!お前、落とすなんて、この野郎!」

「ひっ!ごめんなさい!すみませんでした!そ、掃除しま…痛っ!」

しゃがんで割れた食器を拾おうとしたルエ。

「お前、ケガなんかするなよ!」

(なんでこんなやつを売買屋から買っちまったんだ。くそっ。)

「ご、ごめんなさい!作り直します!」

「作り直しても無駄だよ、馬鹿。」

セレーネは呆れた様子で手早く割れた食器を片づける。

「キッチン、来い。」

セレーネはルエを引っ張っていく。

「いいか、一からちゃんと教えてやる。」

セレーネはいたるところから材料を取り出した。

「まずな、こうして…」

ルエの後ろから両手をまわしてルエの両手を掴む。

(ちょっと、近くありませんかっ!?)

ほのかにシャンプーのにおいが香るようになったルエ。女からいい香りがするのは本当にそそられてしまう。

(まったく…)

心臓の音が少し大きくなった気がしたセレーネ。

二人は密着して一緒に料理を始める。

「わぁ、卵が黄色くなりました!」

ただ卵を溶いただけなのに、それだけで驚くルエ。

「ここから、フライパンだ。熱くなるから気をつけろよ。」

慣れた手つきで卵を半熟に焼く。

「美味しそうです!」

ケチャップを絡めたライスの上に卵をのせて完成させる。

「卵が、変形してる!」

(変形か…。言い方新鮮だな。)

「これはオムライスだ。」

「オムライス?なんでオムライスっていうんですか?」

セレーネはきょとんとした顔で

「ええと…それはな…んなもの知らない!」

「え」

「自分で調べろ。それか勝手に名前つければいいだろう。」

ルエは顔を輝かせて考え始める。

「そうですねぇ…、らいすおぶえっぐ、です!略してらいおぶ!おいしそうな名前!」

そんなにおいしそうか。どうだろう。

「勝手に食べろ、俺は寝る。」

「え!ご主人様!待ってください、お礼を!」

「え?」

立ち去ろうとしたセレーネがいきなり立ち止まり、ルエが勢い余ってセレーネに飛びつく。

「きゃっ!」

ルエがセレーネを押し倒すようなかたちになって倒れた。

お互いの唇がかすめる。

「はっ!ご、ごめんなさい!」

しかもセレーネはルエを抱きしめるような形で…

(な、なんでこんなにドキドキしてるんだ俺?!)

二人はしばらく動けなかった。

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