第36話 天然?

ミーネの激昂は数分で収まった。

俺が何か言った訳ではない。

割り切ったというか何というか『逃げたのなら仕方ない。追跡しよう!』って感じだ。


「追跡しようにも手掛かりが無いとのう」

「あぁ、そうだな」


しかし、手掛かりと言っても何があるのだろうか。

変な世界からは脱出したし、黒い歪みも消えてしまった。現状、何から情報を得ようというのだろうか?


ーーそんなことを考えているとミーネがこちらへ詰め寄ってきた。


「ということで、ライルよ。千手はどっちの方角へ逃げたのじゃ?」

「えっ、さっき言ったろ?黒い歪みに消えたから分からないっつうの。もしかして天然?」


話を聞いていなかったのだろうか?

いや、ミーネは少し顔を赤くて俯いてる。これは知ってたけど忘れてましたってパターンか……恥ずかしいやつだ。

まだ少し顔が赤いが、ミーネは失態を誤魔化すように話を進めだした。


「いや、妾は天然とかそういうのじゃ無いからの。それにしても、黒い歪みか……おそらく転移魔法じゃな」

「転移か。まぁ、何となく予想はしてたよ。ミーネが使ってる転移とは違うっぽいけど、なんか理由あるの?」


アヌビス……違う。あの青年の転移は黒い空間を使っていた。

対してミーネがそれらしき物を使っているのを見たことが無い。

突然出てきて突然消える。真に神出鬼没とはミーネのことを言うのだろう。


「で、何だ?その指」


何故だか知らないが、ミーネが俺を指差してニヤニヤしていることに気が付いた。


「ぷぷぷーっ!妾は転移の魔法陣を組み込んだ宝石を使ってるって、昨日言いませんでしたかのぉ?もしかして天然なのかの〜?」


ああ、そういうことかい。

ここぞとばかりに仕返ししてきやがったよ。

大人気ない……いや、俺の背が小さいだけでミーネの背は中学生くらいだしそんな外見だけど数百年生きてて……ああ面倒い。どうでもいいか。


「いやいや、勘違いしているようだがな。俺はそれを知った上でアヌビスの術と何が違うのかを聞きたいんだよ」


ーーハッ!


俺はミーネを鼻で笑う。

対するミーネは耳まで真っ赤になって再び俯いている。

ーーこの光景が面白かったので、俺は追い打ちをかけてみた。


「ぷぷぷーっ!話の流れが理解出来てなかったんですかぁ?えっ、


ーープツンッ


何かが切れる音が聞こえた気がした。

直後、ミーネが顔を上げる。

その顔はもう赤くない。

能面のように果てしなく無表情だった。


「やっぱ殺しといた方が良かったかの?精神攻撃仕掛けてきたし」

「えっ?!ちょっ待っ!」


俺に指を向けようとしてくるミーネ。

危険どころの話ではない……殺される。

そう感じたのか、考えるよりも先に俺の体は土下座の体制に移っていた。


「本当にごめんなさいっ!反省してます!!反省してますからどうか、どうか御無礼をお許し下さいぃッ!!!」

「なんじゃ、その口調?気持ち悪い」


その甲斐あって、ミーネは機嫌を直してくれて、俺も四肢が揃った状態で生きている。



今回の一件で、この世界で調子に乗ると死に直結することを学んだ。

それに加えて、強者をからかう事は2度としないと誓っ……機会があれば、またやってみようかな。

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異世界転生〜いつか最強になる日まで〜 猫ニクス @Re05024649

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