第35話 一時終局

「なんじゃ?妾はアヌビスと戦って……」


ミーネは起きた。が、まだ目を擦って惚けた顔をしている。


寝起きが悪いタイプか……とか言ってる暇は無かった。

ミーネが目覚めたのを確認するやいなや、黒髪は行動を起こした。


「クッソ、厄介なことしやがってガキが!!」


悪態をつきながら黒髪は指で空中に円を描く。

すると、描かれた円が広がっていき、その奥に黒く歪んだ空間が現れた。


「おいお前っ!その穴は?!」


反射的に叫んでいた。

少なくとも無関係では無いはずだ。

過去に3度、あの時現れた黒い穴をのだ。

黒幕はアヌビスだと思っていたが、今目の前にいる青年が黒幕、そうでなくとも関係はある可能性が高い。


慌てる俺に対して黒髪は、罵倒だけ残すと、その黒い歪みの中へ消えて行った。

まさかと思って目を向けると、アヌビスもいつの間にか現れた黒い歪みに消えていくところだった。

アヌビスが完全に姿を消すと同時に歪みもかき消えてしまった。


「……えっ、終わったのか?」


辺りは静寂に包まれている。

恐らく相手はミーネが目覚めたことで“部が悪い”と判断を下して撤収したのだろう。

分かっている。

しかし、分かっていても“本当にこれで終わりか?”と思ってしまう。

と言うか、正直ミーネに奴等を潰しといて貰いたかった。

奴等は一般の冒険者が太刀打ち出来る相手では無い。

きっと奴等は“勇者”とか言う主人公らしきやつが終盤で戦うような敵だ。

そんな奴と4歳児の俺が戦うなんて無理がある。

今回だって、ミーネが居なかったら皆殺しルート確定だったのだろう。

しかも、奴等は転移らしき術を使えることが分かっている。

いつでもどこでも、突然襲われる可能性が出てくるわけだ。

これでは夜もオチオチ寝ていっ?!


「おい!千手は何処じゃ!!」


俺の思考はミーネの一声によって吹っ飛ばされた。

耳元で叫ばれたのだ。誰だって驚くだろう。


「るっせぇ、鼓膜破れるわ!アヌビスならよく分からん術で逃げてったよ、とっくにな!」

「なぜ止めなかったのじゃ?!そうでなければ追跡を……」


いや、逆に聞くよ?

『なんであんな規格外な存在を止めれると思うの?』

『なんで転移っぽいので逃げた奴を追えると思うの?』

流石に口にはしなかったが、内心で反論する。怒らせると怖そうだし……いや、もうキレかけてるけど。


とりあえず、俺はミーネをなだめることにした。

話はそれからだ。

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