第34話 誰?

「お前、何で動けてる?」


背後から声が聞こえた。

どうやら、さっき声が重なって聞こえたのも幻聴ではなかったらしい。


恐る恐る振り向くと、そこには黒髪の青年がいた。

外見は中学生位だか、纏っている雰囲気が学生のそれでは無い。

猫背になっているから背が低く見えることも原因の1つだろう。

目はキレのある三白眼。

その中には爛々と赤い目玉がこちらを凝視している。


何というか、第一印象は“怖い、ガラが悪い”って感じだ。


黒いジャケットのような服を着込んで、両手をポケットに突っ込んでいるのも若干の不良っぽさを感じてしまう。

というか、何で俺とこいつだけ動いてる……いや、逆に何で周りの人が止まっているのかが知りたい。


「早く夢に戻すぞ。アヌビス、送れ!」

「ゔぁい……りょーがぃ……」


俺が青年の様子を伺っていると、青年はアヌビスに指示を出した。

アヌビスがそれに答えて再び銀色に光りだす。さっきよりも光量が増えていて眩しい。


あ、あれ?今、あいつアヌビスに命令したよな。

で、アヌビスはそれに従って……あいつ敵か!!


と、気づいた時にはもう遅かった。

またしても視界は銀色の光に染められる。

1回目と同じように手をかざすことで出来た影で視界を確保しようとする。


ーー暫くして光は落ち着いた。


俺の視界にうつるのは、唖然としている白髪の青年と寸分違わずそのままの世界だ。

何も変化は無い。

軽く体を動かしてみたが、おかしな所も見当たらない。

対して青年は少しキレ気味だった。


「何で、何で効かないんだ!」

「いや、俺に聞かれてもな」


首を傾げて“分からない”を体全体で表現する。


「馬鹿にしているのか?あ?……っていうか邪魔なんだよ。殺す」


そう物騒な宣言をした青年の腕が黒く変色し、光沢を帯びる。


あ、怒らせてしまった。

無実だと知らせたかったが、裏目に出てしまったらしい。

と言うか、あいつは敵だ。殺すとか言ってたし敵で無くとも危ない奴だ。

それに、きっと強いんだろう。

アヌビスの主人的な?

そうなると俺、太刀打ち出来なくないか?


奴に勝てない、もしくは事態が収集しないと結論づけた後の俺の行動は速かった。

目の前で棒立ちになっているミーネを揺さぶり起こす。


「ミーネ!!起きろ、敵だ!!」

「んぅ……ん?」


ミーネが目を覚ました。

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