第31話 黒腕・赤腕

街の外に広がっていたのは例の歪な黒い空間だった。

つまるところ、隔離されてしまったのだ。

これがアヌビスの仕業なのか、それ以外の仕業なのかという疑問も湧いてくる。

に関係している奴は俺の転生に関わっているかもしれないが、今はそれどころでは無いのだ。

結局のところ先程と状況は変わっていないのだから、現状の打破に力を注いだ方が良いと考えていた。


冒険者兼一同は、アヌビスと広場の端からちょうど中間程度の位置で待機しているのが見える。

戦えない者を囲むように冒険者が周囲を警戒しているようだ。

こちらはひとまず安全を確保したように見える。


あっちはあっちで上手くやってくれるだろうと考えて、俺は街の中心に向かう。


街の中心にはアヌビスがいる。

アヌビスと対峙するのは怖いが、それ以上にミーネが負けていないかが心配だ。

あいつが負ければアヌビスは黒腕を俺達に差し向けるだろう。

実際、ミーネが攻撃を開始するまでは俺を含め街人が襲われていたことから、これは確実と考えていいだろう。

腕の行動範囲に制限があればラッキーなのだが、そこまで都合の良いことは無いだろうと思う。


……と、結局は他力本願な訳だ。


「っと、着いたな」


少し先で、黒腕と赤腕が殴りあっているのが見える。

互いにぶつかると赤腕の形が崩れて液状になる。対する黒腕はヒビが入って粉々になった。黒腕の破片は空気に溶けるように消えていく。

そんな両者の鍔迫り合いがそこら中で起きている。


千手と言われるのも頷ける量の黒腕を操るアヌビスは、神とか言う奴を護っているだけのことはある。

それと張り合うミーネも流石は魔王と言うところか。

戦いの次元が違いすぎて実感が湧かないが……とりあえず、一般市民の俺は割りこめそうにないことだけは分かる。


「見に来たはいいけど、やれることは少ないな」


安全そうな建物の陰で観戦でもしていようと思う。

あとはそうだな……死体の腕でも投げればダメージになるのか試してみるかな。

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