第29話 干渉

再び、黒い腕が飛んで来る。


今度は避けずに雷撃を見舞う。

昨日から乱発しているスタンを期待しての行動だったが、俺の撃った雷撃は黒い腕をすり抜けた。

避けた訳ではない。

何事もなかったかのように。否、事実、何事もなかったのだ。

当たったはずなのに、当たっていない。


「何っでっ……!!」


今度の回避はギリギリだった。

黒い腕の下を転がるようにくぐり抜けて距離をとる。


しかし、さっきの違和感は何だ?

雷撃は当たったはずだ。いや、本当に当たっていたのだろうか。

少しでも情報を得ようと辺りを見渡すと、不運にも重戦士らしき人物が黒い腕に握り潰される瞬間を目撃してしまった。


「うっわ、グロ!!……あれ?鎧が」


ガッチガチに鎧を着込んでいた屈強な男が一瞬で潰されて死んだ。

黒い腕が手放して地面に落ちた死体は目玉や内臓が飛び出てえらい事になっているのに対して、なぜか鎧は新品同然で血で濡れているものの、へこんですらいなかった。


「……物質に干渉できないとかか?いや、実際死者がいる訳だしな」


「赤拳っ!!」


遠く聞こえた声の方を見ると、ミーネが魔法を放っていた。

地面から数百という数の真っ赤な腕が生えてアヌビスに殺到していく。

(ーーダメだ。魔法は当たらない)


波のように迫って来る赤腕を、突如現れた黒腕が


「はっ?!」


なぜ触れられる?干渉できる?


分からない。考えろ、何か手掛かりを探せ。

なぜ重戦士は殺された?

なぜ鎧は無事だった?

なぜ雷撃はすり抜けた?

なぜミーネの赤腕は触れることができた?

なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ、なぜ………

…………

………

……

…そうか、あの黒腕は生物にしか干渉出来ないのか?

ミーネの赤腕も見たところ血液を固めて腕を形作っているみたいだ。

正解かは分からないが、辻褄は合う。


「まあ、解明したところで出来ることも無いんだけどな」


今、アヌビスはミーネの相手にいっぱいいっぱいで俺たち街人を相手にしている余裕が無いように見える。


今のうちに逃げるか?

うん、逃げよう。

ここにいても足手まといだしな!

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