第28話 神柱

「神柱……あいつが四柱の一角なのか?」

「ああそうじゃ。先代の勇者が倒れてから230年、ようやく姿を表したかの


ミーネが一歩、ゆっくりと前に出る。


「この日をどれだけ待ちわびたことか。今の妾はあの日とは違うのじゃ!『血の新歓にて神をも殺せ、血闘爛々ブラッドレイジ』っ!!」


短い詠唱を終わらせた瞬間、隣にいるミーネの気配が膨れ上がる。

身体から陽炎のような赤い霧を放出してミーネの足元から地面を侵食するように真っ赤な空間が広がっていく。

それだけで無く、変化は本人にすら及んでいる。

額から真紅の角が二本生えて、全身に真っ赤な紋様が刻まれる。


わお、変身って感じか。

かっこいい!憧れるなああいうの!


「そこの物言わぬ者達は転移させておいた。御主も下がっておれ。巻き込んでしまうのじゃ」


ミーネの言葉通り、広場に立ち尽くしていた街人は誰1人としてその場にいなかった。


「ああ、そうしておくよ」


俺もそそくさと下がっておく。


そうしている間にアヌビスの方も動きを見せていた。

座した状態から一歩も動いてはいないが、身体に刻まれた魔法陣が銀色に光っている。異常に気付いた瞬間、光は爆発したような光量を撒き散らした。

俺はあまりの眩しさに手で影をつくって視界を確保しようとする。


ーーー眩しい。


しかし、ただそれだけだ。

熱量がある訳でも無く、ダメージらしきものも無い。


程なくして光は収まった。

しかし、耳には聞き慣れない声が聞こえ出した。


「右だ!早く逃げて!」

「やだ、後ろ助け?っ、!!」

「何だよあいつ!どこに……そっち、そっち行った!!」


広場を行き交う人々……あれはさっき棒立ちになっていた街の人たちだ。

いや、それよりも不可解で不気味な光景に目が移る。

なんだよあれ。

腕だ。真っ黒い腕に追われている。


アヌビスは健在、変わったことといえば銀の魔法陣が消えて……アヌビスの腕が、無い。

肘から先が混沌に飲まれるように歪み、消失している。


「ミーネ、何が起きてる!!」

「“千手”じゃ!アヌビスが仕掛けて来おった!」


なるほど、あの飛び回っている黒い腕はアヌビスのものか。

“千手”ってことはアレを千本出せるのか?いや、いくら何でも“多い”ってのの比喩だろうが、厄介極まりないではないか。


俺の方にも、来た。

黒い腕が獲物を見つけたように真っ直ぐと俺へ向かってくる。

とっさに伏せて回避するが、通り過ぎた腕は程なくして追いに戻ってきた。


追尾式かよ……

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