第27話 アヌビス

しばらく走ると街の入り口が見えてきた。

道中にモンスターの気配は無く、あっさりとたどり着いてしまった。

さっきのコボルドは撒けたみたいだし、とりあえずは街で匿ってもらおう。

……そう考えていたが、1つ気掛かりがある。


さっきから、街に近づくにつれて血臭が濃くなっているのだ。


まさかとは思うが、街の方も襲われてたなんてことは……無いよな?

そうだ、街が襲われても捜索隊として父さん達と、別の町からも冒険者が派遣されているはずだ。

負ける訳無いよな。

というか、負けてたらここら一帯の生存者は残らないだろう。勿論、その中には俺も含まれる。


吉報を望みながら走り続け、広間のように開けた街の中心にたどり着いた。


そこで俺は立ち止まる。

今、目に移る状況に困惑を隠せなかった。


広間を囲むように屈強そうな男や、魔法使いらしき老人などが立ち尽くしており、ピクリとも動かない。

そして、広間の中央には見慣れない魔物が座していた。

真っ黒な犬の頭に人間の体。これだけ見ればコボルドのように見えるが目の前の魔物は毛が生えておらず、肌は陶器のような光沢を放っている。 身体中に魔方陣らしき模様と金色の装飾がちりばめられており、これはまるで……


「エジプト、冥府の神アヌビスだっけか?」

「ああ、半分はあってるの。正確には“千手のアヌビス”じゃ」


急に背後から聞こえた声に飛び退くと、そこにはいつの間にか真っ赤な少女が立っていた。


「ミーネか、どうしてここに?」

「御主に渡した宝石を介して転移してきたのじゃ。彼奴、四柱アヌビスを殺す為にの」


あ、やっぱり瞬間移動できるんだ。

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