第21話 報告

散々泣いていたスフィーだったが、しばらくして落ち着きを取り戻してきた。

すると、いつもの親としての口調に戻る。


「ライル、なんで町から出たの?もう絶対に森へ入っては駄目よ遊ぶときは町の中だけね。はい、ママとの約束よ」


スフィーが人差し指を立てて俺に言い聞かせる。


「……いや、嫌だ」


俺が否定する筈がないと思っていたのか、まだ少しだけ赤い目を見開いてスフィーが驚いた表情を見せた。

俺はスフィーから目を逸らす。


森に魔物がいて危険なのは知っているが、だからこそ俺には森に入る必要がある。

余命4年。

そのタイムリミットは今も刻々と迫っているのだ。

これは話した方がいいのだろうか。

しかし、これを話せば魔王と会ったことから俺が転生者だということまで全てを話さなければ辻褄が合わなくなる。

でも結局は外出禁止にされるとどうにもならないしなぁ。


メリットか、デメリットか、どちらが大きいかを見極めなければ今後が大変になってくるだろう。


考えを巡らせていると、逸らしていた視線の先が歪んだ気がした。

目を凝らすと、うっすらと歪んだ景色の先に真っ黒な空間が見えた。


「ーー今の?!」

「なぁにライル、話を逸らさないの!」


俺が咄嗟に指をさした方向をスフィーが向く。

しかし、既に歪みは消えてしまっていた。


俺はあの黒い空間を見たことがある。

何処でかなんて、聞かなくても分かるくらいハッキリと覚えている。


あれは……この異世界に来る前、俺を飲み込んだ“穴”だ。


「父さん、母さん。少しだけ聞いてくれ……」


俺は全てを話すことにした。

あの穴がこの世界にあったなら、現実世界に帰れるかもしれない。

向こうの世界に未練がある訳でも無いが、それはこちらも対して変わらない。

なら、安全に暮らせる方が良いというものだろう。

その時には、事情くらい知っておいて欲しいしな。


残りの命が少ない以上、ここで転生者として忌避されても支障は小さいとみた。

とにかく、俺は生き残るのだ。

かくかくしかじか、その為に俺は全てを打ち明けた。

魔王のことや魔法のこと、俺の余命から何まで全てを告げた。


ただただ黙って聞いていた両親は意外だった。もっと質問や野次があるかと思ったが、今の所それもない。


「〜というわけだ。僕は地球から来た、日本人なんだ」

「分かったわ。で、ライル。結局何が言いたかったの?」

「は?」


なんら気にした様子もなくスフィーが俺を撫でる。

あれ?驚かないんだ……

ポカンとしている俺の背をゴメフが軽く叩いた。


「話は聞いたぜ、坊や。何か勘違いしてるかもしれねえが、この世界には前世の記憶持ちなんてザラにいるぞ?」

「それ、本当ですか?!」

「ああ、本当だぞライル。かく言う俺もその1人だしな」


ゴメフの爆弾発言に驚く俺を他所に

、再度確認でカルムが記憶持ちだと告げる。


ああ、もう訳わかんないや。


疲れ切った体と頭のスペックが限界を超えたらしい。

視界がスパークする錯覚と共に、俺の意識は沈んでいった。

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