第20話 帰宅

俺は街の鍛冶屋戦鎚工房の裏まで帰ってきていた。


しかし、魔法によるバフがないせいで、帰ってくるのに相当の時間を要してしまった。

結果、門限として定められていた時間は過ぎて今は7時過ぎである。

ここから更に、家まで数百メートル歩くことになる。日本にいた頃なら10分もかからない筈だが、赤子の身体には相当な負荷だ。

まぁ、愚痴っていても仕方がない。


「歩くか……」


俺は町に入った。

家に帰るんじゃないの?と思った方もいるだろうから付け加えると、森はこの町サダハの西、俺の家は東に少し進んだところにあるため、自然と町を通り抜けることになる。

ついでに言えば南にずっと進んでいけば王都があり、北は“世界の果て”と言われる超巨大な渓谷があるらしい。

どちらもいつかは行ってみたいと思っている。


さて、話しを戻そう。

町に入るとなんだか雰囲気がおかしいことに気がついた。

何やら昼間よりか騒がしい気がする。

とりあえず、近くに見つけた戦鎚工房のおっさん(ゴメフ)に声をかけてみた。


「よう、なんでこんなに騒がしいんだ」

「おお、坊や、坊……は?!」


おっさんは軽く会釈をしてから急に驚き出す。

そして、


「おい坊や、ちょっと待ってろ」


そう言うと、早足で町の中に駆けて行ってしまった。

それを見届けた俺は、ゴメフに従い、この場で待機することにした。


ーーーーー


しばらくして、カルムとスフィー、その他諸々を連れて戻ってきたゴメフに、この喧騒の事情を伺った。


今日の霜4時頃に森に光の柱が現れたこと。

スフィーが『ライルが町にいない』と自警団に駆け込んだこと。

それを機に、町の子供が数人いなくなったこと。


……大体、俺が原因やないか。


多分だが、光の柱とは俺の撃った雷だ。

ライルがいない、この件については俺が森で魔王と遭遇していた。

子供が数人……あれ?

これは関係ないぞ。


関連性のない事件に困惑していると、スフィーが突然抱きついてきた。

カルムは突っ立ったまま目尻を拭っている。


「ライル!無事でよかった」

「なんで森に行ったの?魔物がいるから危ないって言ったじゃない。もしあなたが死んでしまったらと……」


俺を抱き抱えるスフィーと、スフィーの背を撫でるライル。

たった半日いなかっただけでこの反応はどうかと思ったが、よくよく考えれば、俺は危険地帯から生還したのだ。

太平洋戦争から息子が帰ってきたときの親の気持ちだろうか。

言ってなんだが、後から自分で分かりにくい例えだと思った。

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