第18話 方法

少女が顔を上げる。

まだ若干、不機嫌そうだ。


「じゃあ、話を戻すぞ」


そう言って真剣な顔に戻った。

知らずとはいえ、なじられたのに助けてくれるなんて、懐が深い人だ。


「妾が御主の魂を器にあった大きさまで削れば、死ぬことはない、が……」

「……んで、言い渋ってるってことは副作用か何かがあるんだろ?」

「ほう、鋭いな。副作用で、記憶が9割程もってかれる」


うん、却下。

もしやるとしても最終手段だ。

この時点で選択肢から前者は除外された。

あとは後者に期待しよう。


「で、2つ目は、レベルを上げることだ」


は?ゲームですか?!


「うーん、説明がしにくいがな。生き物を殺すとたまに、レベルが上がりましたって頭に響くのじゃ」


ステータスの概念が無い世界で、レベルだけが独り歩きしている状況か。


「レベルが上がると肉体(器)が強化されていくのじゃ。もう言いたいことは分かったかの?」

「ああ、つまり魂が収まり切る位までレベルを上げろってことだろ」

「ご名答」

「で、どれくらい上げればいいんだ」


これによって難易度が変わってくるだろう。


「んー……5レベルくらいかの」


うっしゃー、そんな低レベルでいいなら楽勝だ!

そんな喜びは直ぐに掻き消された。


「だいたいの基準としては、1レベル上げるのにワイバーン100体くらいかの」


ワイバーン、それは低位の竜種である。

真竜と違ってブレスこそ吐かないものの、その強さはA級冒険者にも匹敵する。と、確か、図鑑にはこう書いてあった。

ちなみに、一般人はどれだけ頑張っても才能が無ければBランク止まりらしい。才能が無い者は、Aランクには上がれない。

Aランクとは、本当に選ばれし者だけが辿り着ける高みなのだ。

その上にSランクというのもあるが、これは例外であり、人外とも呼べる強さを持っているらしい。

きっと、目の前の少女みたいな奴なんだろう。


「強さ的に言えば、Aランク100人だろ。無理だな」

「では、記憶を削るか?」


いや、ワイバーンは目安だ。

ゴブリンを数倍倒せばいいのかもしれない。野生動物を取り尽くす勢いで狩ればいいのかもしれない。

まだ手が無い訳では無いのだ。


「いや、ギリギリまで足掻いてやるよ」

「そうか、せいぜい生きてみせるが良い」


そう言った後、少しの静寂を挟んで少女が何かを思い出したようにポンッと手を叩いた。


「そうじゃ、御主の名前を聞いていたかったの。なんと言う」

「ライル。ライル・エレシスだ」


ちなみに、エレシスは俺の家名だ。

日本で言うところの苗字みたいなものだと思ってもらえれば良い。


「ライル・エレシスか。気が向いたら覚えといてやろう」

「そうか、そりゃありがたい」

「それとの、御主はなぜ幼い体で動き回れるのじゃ?何か秘密があるのじゃろ」


ごもっともな質問だ。

これに関しては、ミーネの推測は正しい。

普通2年数ヶ月の子供が俊敏に歩くことなど不可能なのだ。

そして、その不可能を可能としているのが、雷魔法の応用だ。

人の体のほとんどは、脳から発せられる微弱な電流で動いているらしい。

俺は単に、この電流を魔法で増加させてみたのだ。初めは一瞬で筋肉痛になったり、体が勝手に動いたりと大変だったが、最近になって、やっとまともに動かせるようになってきたのである。


俺はこれをミーネに話したが、彼女には理解できなかったらしい。

「もう良いのじゃ!難しいもんは聞きとうない!」と、話しを打ち止められた。

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