第16話 魂と器

知らない単語に意味不明な余命宣告。

俺の頭は混乱の最中にあった。


「えーっと、俺が死ぬ理由以前に、器とかなんとか、意味不明なんですけど……」

「御主、そんなことも知らんのか。よければ私が教えてやる」

「では、お言葉に甘えて」


呆れたようなポーズをとる少女に、俺は説明を頼む事にした。


「ではまず、お前のような人間は精神と肉体、この2つで形成されることは知っておるな?」


俺は静かに頷いた。


元の世界にも似た考えがあった。

古代ローマ人の言葉で、“健全な精神は健全な肉体に宿る”だっけか。

いや、意味は全然違うか。


「それが分かるのなら話が早い。肉体が器、精神が魂と考えると分かりやすいかの。本来、この2つはバランスが保たれているのだが、御主はちと、魂の方が大きすぎるようだ」


ああ、理解できた。

要は、このバランスが崩れていると生きていられないのだろう。


「魂が大きいと、器に収まり切らなくなる。そして、当然収まらなかった魂は抜けていく。そうすると、その人間を構成するものが足りなくなる訳じゃ」

「んで、植物人間ってか。助かる方法はあるのか?」

「あるにはあるのだが……」


少女は腕を組んで、考える素振りを見せる。


「方法は2つだ」


そう前置きをして少女は話し始める。


「まず1つは、魂を削ること。鮮血の魔女と呼ばれる私なら、簡単に行える処置だ」

「えっ、おいちょっと待った」

「ん?なんだ、話を止めるな」


会話を止められて、少し不機嫌になる少女。

そんなことはどうでもいい。今、聞き逃せない単語を耳にしたのだ。


“鮮血の魔女”この名前は親に読み聞かせてもらった絵本の中に出てきた。

旧魔王の一角にして、魔王内での序列3位。

本名はレナスナトア・ミーネ。

絵本の中では勇者と戦っていた悪役である。

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