第14話 長期的スタン

「御主、目を逸らそうという気はないのかの?」


少女の言葉で我に返った。

危ない危ない、思考が停止していた。


少し頭を振ると、意識がハッキリしてきた。すると、鮮明になった視界に裸体が飛び込んでくる。


「うわぅっ、あの……ゴメン」


俺は急いで少女から目を背けた。

チラッとだけ見えた少女は、けっしてロリコンではない俺でも、美少女枠に入れるくらい綺麗だった。

ただただ、敵だということが悲しい。


「妾は体が動かんのじゃ。この不思議な拘束を解いてくれぬかの?」

「嫌だな。俺にそんな義理もない」


少女の頼みを即答で切り捨てる。

もし電撃によるスタンの効果が切れれば、オレを殺しに来るのは当然、いや必然なのだ。

しかし、スタンは時間が経てば自然と解けてしまうし、逆に今すぐ解くこともできないのだ。

それを悟られてはいけない。


「お前は一生そこで突っ立ってろ」

「ふんっ、この効果が一生続くものではないことくらいわかるわ。妾をみくびるなよ」


不敵に笑い、冷徹に告げられた言葉に俺は絶望する。

このまま時間が過ぎれば俺に待っているのは『死』のみなのだ。

万策尽きた。もう終わったのだ。


「ああ、そうか。もう勝手にしてくれ」


……俺は完璧に諦めていた。


ーーーーー


会話が途切れてからしばらく経ったが、未だに少女が動く気配がない。


「のう御主。もしかして自然には解けんのか」


心配になったのか、少女が折れて話しかけてきた。

流石に魔法を放った本人でさえ、スタンの時間が長すぎるのではないかと思えてきた。

たしか、日本で売られているスタンガンだと痺れは、続いて4分程度らしいが、そろそろ1時間が経とうとしていた。

まあ、俺にとっては都合の良いこと間違えなしだ。

今の内に和解交渉に励むとしよう。


「とりあえず、話を聞いてくれ」

「なんじゃ、聞いたら解いてくれるのか?」


ーーよし!話に乗ってきた。そして、会話の主導権はこっちが握っている。

この調子で続ければ、助かる余地があるかもしれない。

何度も諦めかけた命だが、俺はまだ死にたくはないのだ。


「幾つか質問がしたい。いいか?」

「ああ、妾が答えられることなら教えてやろう」

「じゃあ1つ目だ。なぜ人を殺す」

「なんじゃ、そんなことか。簡単な話よ。目的の為じゃ」

「目的?」


相手をただの自的理論殺人者だと思っていた俺にとって、大分予想外の返答だった。

しかし、それに続いた言葉に更に驚くことになる。


「妾が、いや、妾達が目指すのは『神殺し』よぉ。ただそれだけじゃ」


そう告げた少女は笑みを浮かべる。

口が裂けるかと思う様な果敢な笑みを。


「なんで、なんでそんなに悲しそうなんだ?」


しかし、笑った口元とは対照的に、少女の目には悲壮感が漂っていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます