第11話 遭遇

森に入ってしばらく進んだが、何の気配も感じない。


「……妙だな」


本当に何もいないのだ。

普通、森の中なら小動物や虫がいる筈だ。

何なら俺が、実際に窓の外を覗いて見つけていた。角の生えた野ウサギのような魔物や、バッタらしき虫も確かに、この森にいたのだ。

それが今は、不気味なくらい静まり返っていた。


(この先に、近づきたくない何かがいるのか?)


生物の生存本能を馬鹿にしてはならない。

強者から逃げるという考えは、自然界では当たり前のことだ。

勿論、人間にだって備わっている筈なのだ。


俺は本能が警笛を鳴らしていたのを知っていたが、足を止めようとは思わなかった。

危険意識以上の好奇心があったからだ。

肉串が入った袋を片手に森を駈ける。


そして、森の中に何故かポッカリと開けた平地へ出てしまった。


「いや、平地とは違うか……」


よく見るとそこは、中規模のクレーターだった。

木々が消し飛んだ跡があり、真っ赤な肉塊が散乱している。

これだけで少し吐き気を催したが、クレーターの中心を見て更に絶句した。


そこには、赤毛の少女と、その少女に向けて剣を構える兵士が見えた。

しかし、そんな状況の中で、俺に恐怖を植え付けたのは少女の方だった。


少女が兵士に向かって話しかけると、急に兵士が剣を捨てて逃げ出そうとしたのだ。

背を見せた兵士を少女が指差す。

たったそれだけで、兵士の全身から真っ赤な刃が生え、その場に倒れたのだ。


何が起こったのか、分からなかった。

しかし、1つ明確に分かることがある。

あの少女はヤバイ。これだけだ。


何が『当たって砕けろ』だ!

あんなんに当たったら砕けるどころか微塵切りだ。


そんな訳で、見つかる前に町に戻ろうと後ろを向くと、そこには真っ赤な双眸で俺を見つめる少女がいた。


あ、終わった……

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