第9話 戦鎚工房

工房から出てきたのは、筋肉質なイカツいおっさんだった。頭にはバンダナのようなものを巻いている。

着ているものは作業服のようだ。

ハンマーを手に持っているところを見ると、今さっきまで何か作っていたのかもしれない。

呼び出してしまったことに少し罪悪感を感じた。


「で、坊や。今日は何しに来たんだ?」

「初めて街に出たので、気になるところを見て回ろうと思っています」

「つまり、目的は見学か。俺はゴメフってんだ。案内してやるよ、ついて来い」

「あの、少し待ってもらっていいですか?」

「ああ、いいが?」


首をかしげるゴメフをよそに、俺は試しにドアをスライドさせてみる。


スー……


簡単に開いた。

次は閉じてみる。


スー……


閉じた。


「俺でも動かせたじゃねえかっ!!」

「おいっ?!急にどうした坊や?」

「いえ、もう大丈夫です。行きましょう」

「そ、そうか。坊やがいいならそれでいいけどな」


急にスライドドアにキレて蹴りかかった俺に『何やってんだ、あいつ?』とでも言いたげな顔を向けるゴメフの後をついていく。

途中、工具の性能や名称を聞きながら、ゴメフが作業所と読んでいた場所にやってきた。

そこには、武器や鎧は勿論のこと、なぜか、鍋や包丁まで一緒に置いてあった。

というか、日用品の方が多い気がする。


「どうだ?自由に触ってもいいが、絶対に壊すなよ」

「ありがとうございます!」


ーーーーー


あの後、ゴメフに許可をもらった俺は、作業所を見学して回った。

ちなみに、さっき見つけた鍋などは、町の人から修理を依頼された物らしい。

ここサダハでは、鍛冶屋が1軒しかない為 《戦鎚工房》で全ての修理を引き受けているんだとか。

狩人や冒険者より圧倒的に町人が多いので、必然的に日用品が多くなるわけだ。


一通り見学を終えると、俺は次の目的地へ向かうことにした。


帰りも“スライドドア”だということを忘れて、しばらくの間、引き続けていたことは誰にも内緒だ。


次向かうのは、薬屋だ。

地図によれば、町の西側にあるらしい。

ここから少し北へ進んだ場所だ。


そういえば、そろそろ昼時か?

少し、飯を食ってから行くか。

そんなことを思いながら《戦鎚工房》を後にした。

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