第8話 外出許可

最近思ったのだが、俺のカルムへの第一印象は“落ち着いている”だったのに、見た目とは裏腹にだいぶ活発的だ。

人は見た目に寄らないものだなぁと思った今日この頃である。

いや、スフィーは見た目どおりおっとり、のんびり、マイペースだ。

なんていうか、こういう時に“人それぞれ”って言葉が便利だな。


さて、本題に入ろう。

俺が魔法が使えるようになってから更に1年と2ヶ月後、庭より外への外出許可が下りた。


最近は言葉もペラペラと流暢に話せるようになった。

あの日から魔法の訓練も欠かさずに続けている。

無詠唱魔法というのは、コツを掴みさえすれば簡単で、今では電気を放出して文字を書けるほどにまで上達した。

この魔法はまだ両親には見せていない。

言い出すタイミングが見つからないのだ。


これまで地味な毎日だったからか長く感じたが、俺はまだ生後約2年と2ヶ月だ。

この歳で魔法をぶっ放したら大騒ぎだろう。

3歳くらいになったら打ち明けるつもりだ。

それまでは、自慢したい気持ちもあるが自重だ。変にトラブルを起こすつもりもない。


ーーーーー


父と母に「行ってきます」と頭を下げて家を出た。

両親からは、霜の6時には帰ってくるように言われている。


この世界の時間と概念は日本とほとんど同じだ。

唯一違うのは、午前が“正”、午後が“霜”と呼ばれていることくらいだ。

今回は午後6時ということだ。


簡単な説明だけだが、一旦この話は置いておこう。


数分歩くと、市街地が見えてきた。


そこで、俺はズボンのポケットから1枚の紙切れを取り出した。

家の中にあった周辺地図を写してきたものだ。

もちろん手書きだ。

この世界の印刷技術は進歩していないらしく、俺が読んでいた《魔法基礎・初級〜上級の概要》でさえも人の手によって写された“写本”らしい。


(型番でも作って売れば儲かるのかな……)


頭の片隅にでも置いておこう。


俺は地図を頼りに町の中の探索を始めた。


しばらく歩くと、槌を二本クロスさせたような看板が見えてきた。

まず立ち寄ったのは《戦鎚工房》。

町で唯一の鍛冶屋だ。


重いドアを開けて中に入ろうとする。


「あれ?開かない」


オリァアアーー!!………ハァハァ…


全力で押したが全く開く気配がない。

どうしても開かなかったので、仕方なく人を呼ぶことにした。


「すみませーん、誰か開けてもらえませんかー!」

「応っ!ちょっと待ってろ」


扉の奥から男の声が聞こえてきた。


ーーーーー


「作業所にいたから遅れてな……待たせてすまん」

「いえいえ」

「お?珍しい客だな。よう坊や。《戦鎚工房》に何の用だ?」


返事があってから数分後、そんな声と共に、扉が横に開かれた。


「スライドドアかよ……」


俺は店の前でそう呟くのだった。

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