第6話 雨の日に

俺が異世界に来てから1年が過ぎた。

魔法の練習を初めて10ヶ月、未だ成果は出ていない。


この時期になってくると、既に俺は歩けるようになり、部屋の外へも出ることも容易くなっていた。

言葉も話せるようになった。

しかし、まだ長い言葉を話すと喉が痛くなるので、単語に区切って発声している段階だ。

こちらについては、解決するのも時間の問題だろう。


とはいえ、俺はまだ家の外には出たことが無い。

最も遠い場所で、家の庭までだ。

数日前、俺は庭にあったフェンスを登ろうとしているところをカルムに見つかったのだ。

前々から『まだ小さいんだから、外へは出るなよ』と注意されていたのにこっそり出ようとしていたのだ。

散々叱られたのも最近の記憶だ。

赤ん坊に怒鳴るのはどうかと思ったけどな。


それにしても、最近また暇になってきた。

赤ん坊の頃は見るもの全てが珍しく、興味や好奇心によって毎日が楽しいものだ。

しかし、俺の好奇心は今、魔法とダンジョン一筋だ。

魔法は修行中、ダンジョンへは庭すら出れない状況にうんざりしていた今日この頃だ。


ーーーーー


ある日、久しぶりに聞いた懐かしい音で目が覚めた。


雷の音だ。


この地域は少し雨が降りにくい。

そうは言っても本当に少しだ。

日本の冬くらいの周期で雨が降る。

しかしながら、規模は小さい。

積乱雲の大規模で短時間の雨ではなく、乱層雲の小規模で長時間降り続く雨だ。

しかし、今日の雨は違う。

周りの会話が妨害される程の大雨だ。


朝起きたら俺は、窓の外を眺めていた。

あの雷から魔法のヒントが得られるのではないかと思ったからだ。

雷を眺めながら、手のひらに魔力を集めてイメージを続ける。


そんなことを続けていると、ふと、頭にテスラコイルが思い浮かんだ。

テスラコイルとは、科学的に電気を作り出す道具で、コイル自体を巻けば巻くほど電圧が上がる恐ろしい機械だ。

人を感電死させるのだって容易い。


この発想を使ってみる。

魔力を廻す、循環させるイメージで、雷という現象を起こそうと試みる。


ーー……バチッ!


俺の手のひらで火花が散った。

まだだ、更に出力を上げて魔力を巻き上げる。

すると、螺旋状の雷が轟音と共に天井に向かって登って行った。


成功だ!やっと成功したのだ。


しかし、今の俺の心には喜びという感情は薄かった。

それもその筈、天井に突き刺さった自作の雷によって天井には大穴が開いていた。

雨が降っていたおかげで、発火は瞬間的だったものの、俺の頭上からは滝のような雨が降り注いでいた。

なんだか憂鬱だ。


轟音を聞きつけてか、廊下から慌ただしい足音が聞こえてきた。

両親が来る。


はぁ……言い訳でもしに行くか。

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