第3話 魔法適性

俺が異世界に来てから約2ヶ月が過ぎた。


ついに俺はハイハイが出来るようになったのだ。

ハイハイは、普通の赤子なら1歳あたりでし始めるらしい。

たったの2ヶ月で這いずり回る赤子は異常なのだが、両親共に何も気にしていない様子だったので良しとしよう。


それよりもだ……長かった。

何も出来ないのにハッキリとした意識だけがあるというのは、こんなにも辛いものだとは知らなかった。

だが、そんな苦痛の時間も終わった。

これからは自分の足という最大の移動手段を手に入れたのだから。


それに加えて親から新しい知識も教えてもらった。

とは言っても、所詮は赤子に教える知識だ。実用的なものは少ない。

しかし、その中でも気になったものは幾つかある。


1つ。

この世界の魔物やダンジョンについてだ。

異世界の王道であるこれらは、やはりこの世界でも危険なのだそうだ。


夜に読み聞かせてもらった絵本に《常闇のダンジョン》というダンジョンが出てきたが、実はこのダンジョン、家の裏山の奥にあるらしい。


スフィーに『ぜったいに入ってはダメよ。戻ってこれなくなるからね』と言われている。

当時、歩けもしなかった子供にしてみれば、『部屋から出ることすら出来ねぇよ』と言いたいが、本当に危険なのだろう。


その物語の内容は簡単だ。

ある男が財宝を求めて《常闇のダンジョン》に入っていった。

このダンジョンは、魔物が出ないことで有名だったらしい。

しかし、入り口からは真っ暗闇で、上下すらも分からなくなってくる。

火を灯そうにも直ぐに消えてしまい、魔法で灯りを付けようとしても発動すらしないという特殊なダンジョン。

この中をひたすら歩いて、明かりが見えた先は元の入り口だったという話だ。


最近も、何年かに1人は挑戦する者がいるものの、殆どが行方不明となっているらしい。


2つ。

魔法について。

話に何度か出てきたとおり、この世界には魔法がある。

そして、魔法には種類があり、適性のあった系統の魔法しか使えないらしい。


数日前、家にと呼ばれる人物が来た。

いかにもなローブに身を包んだ、ヨボヨボの爺さんである。

どうやら、俺の適性を調べる為に両親が呼んだらしい。


「では、この水晶玉に手を置いておくれ」


魔導師の言葉のとおりに、俺の手をカルムが水晶玉に置く。

別に、俺自身が動かしても良かったが、なるべく普通の赤子であるということにしておきたかった。

特殊な記憶を持っているという事がどう働くかは分からないが、忌避されるのは目に見えている。

とりあえずは黙秘を貫こうと思う。


さて、本題に戻ろう。

俺が手を置くと、水晶玉は薄く金色に光ったのだ。


「なっ、光系統?いや、水か?……」


何らや魔導師がブツブツと呟いていた。この系統検査って正確に出るものでは無いのだろうか?


「すいません、ご夫妻様。初めは光系統だと思ったのですが、何やら水らしき系統も見て取れるのです。

こんな事例は初めてでして……検査は続けてみますが、分かることは少ないと思います」とのことだ。


魔導師が次に取り出したのは、真っ白い紙だった。

魔導師曰く、この紙に触れるとそれぞれの系統特有の変化が起こるらしい。


さっきと同様にカルムが俺の手を乗せる。

すると、俺の手が紙に触れた瞬間、紫電が走り、それによって紙が燃えた。


「今度は燃えた……もうお手上げですよ。長年系統鑑定をしていますが、見たことが…いえ、聞いたことすら無いんですよ。

お役に立てなくて、申し訳ありません」


そう言い残して、魔導師はとぼとぼと帰っていった。

役に立たなかったのだからと、代金も受け取っていかなかったので、両親も困り顔だ。


しかし魔導師よ。

俺は感謝しているぞ?

だって、さっきの検査で気づけたからな。

俺自身の魔法系統に!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます