幼少期

第1話 転生


目が醒めると、やけに身体が重く感じた。と言うか、起き上がれない。

試しに手を握って開いてと繰り返してみると、こちらは力は入りづらいが正常に動いた。

その後も色々と身体を動かしてみたが、どうしても頭が持ち上がらない。

噂には聞いたことがあるが金縛りか?


今、俺の視界に映っているのは年季の入ってそうな木の天井である。

っということは、ここは屋内か。


屋内なら人がいるのでは?ということで、早速助けを呼んでみた。


(誰か〜!いませんか〜!)


そう叫んだつもりだった。

しかし、俺の声帯から出たのは、うめき声ともあえぎ声とも判別のつかない音だった。


その後も何度か叫んでみたが、口から出るのは「ウーッ」や「アーッ」という音ばかり。


状況が分からない。

未だ、登校中に見た穴が何なのかすら分からないというのに、目を覚ましたら金縛りときた。


(クソッ、何がどうなってるんだよ!)


感情のままにかすかに動く腕を叩きつけると、何かに当たった。

俺はそれを掴むと、精一杯の力で顔の前まで持ってきた。


それは、おしゃぶりだった。


(あぁ、そういうことか)


納得はしていないが、理解は出来てしまった。


つまり、俺は幼児退行している。

それも、極めて稀な記憶が戻るのではなく、身体が戻る方の……


いやいや、そんなはずが無い。

稀とか以前に、そんな症状あるはずが無いだろう。


……しかし、結論として今の俺は赤ちゃんだ。


上体を起こせないということは、まだ首も座っていない生まれたての赤子だろう。



そんな考察をしていると、何処からか足音が近づいてきた。

母さんか、父さんか、どちらでもいいから来てくれるのはありがたい。

知っている人がいるだけで、人間は安心できる生き物なのだ。


扉が開く。


入って来たのは、25歳位の優しそうな男性だった。


(知らない人だよ、誰?!)

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