第78話 サービスシーン
「おお〜広い広い!」
「神無、走ると危ない」
「っていうか灰魔館も風呂の広さはそんなに変わんねぇんじゃないか?」
「けど、やっぱり雰囲気が違うね」
「うん。古い感じだけど、趣があっていいですね」
古びた大浴場に、それとは正反対の若く、見目美しい少女たちがタオルで軽く前を隠しただけの姿で現れた。
誰もが見惚れるほどの容姿を持つ彼女たちは、ノスタルジックな侘しさのある銭湯の雰囲気からひどく浮いているように感じられる。
しかし、そのミスマッチさが一層彼女たちの瑞々しい色気を引き立てていた。
そんな思春期の男子が見れば卒倒しそうな光景から、恥ずかしそうに目を逸らす者が一人いた。
その人物が脱衣所から中々出てこないことに気づいた神無は、ニコニコと笑みを浮かべながらその手を引く。
神無に引き摺られるように浴場に出て来たその人物————澪夢は顔を赤くして両手で必死に視界を覆い、目の前の光景を直視しないようにしていた。
「澪夢ちゃんそんなに恥ずかしがらなくてもいいじゃん」
「むっ……無理ですよそんなの! 一応自分は元『男』なんですよ!? 刺激が強すぎます!!」
「そんなこと言っても、澪夢ちゃんにもこんな立派なのがついてるじゃん。ウリウリ」
「ひゃっ……どっ…どこ触ってんですか…! やめっ……ぁん……!」
「おお! すごーい! 柔らかぁい!!」
神無は澪夢の甜瓜のようにたわわと実った胸を背後から揉みしだく。
クッションのような柔らかさを持つ澪夢の胸は、神無の細い指で面白いように形を変える。
胸からの刺激は微弱な電気となって澪夢の体中をくすぐる。
そのくすぐったさに悶える澪夢の口からは艶めかしい喘ぎ声が漏れ、細いながらも適度な肉づきの肢体は男を誘うかのように震え、強烈な色気を放っていた。
その光景を傍から見ていた少女たちは一様に顔を赤くする。
「話には聞いてたけど、夢魔ってすげぇな……同じ女でも見てるとなんかムズムズするわ」
「本当に元は男の人なんですよね?」
「うん? まあ、そうなんだけど……」
志歩の問いかけに、姫乃は歯切れの悪い答えを返す。
以前のこと(第五章参照)から女性の姿でいることが増えた澪夢は、『夢魔』としての力を急速に開花させていた。
元々『女』としての性が合っていたのか、それとも他の要因が作用してなのかは定かではないが、性別関係なしに他者を魅了するほどにまでなった澪夢の成長度合いには度々相談を受けていた姫乃も驚いていた。
「まぁ、さすがは『夢魔』といったところだな」
「しかし、デモニアの
「うん……」
「二人ともどこを見ている」
姫乃は手にしたタオルで胸を隠す。
メルと志歩の視線に反応したのか、姫乃の豊かな双胸がたおやかに揺れる。
澪夢の胸と同等以上の大きさながら、パツパツに張りのある分、バストサイズでは姫乃に軍配が上がる。
タオルで隠そうとも、依然その存在感を主張する二つの果実にメルと志歩は頷いて感心した。
「一体何喰ったらそんなにデカくなるんだ?」
「別に何か特別なことをしたわけじゃないんだけどな……あっても何も得はしないぞ? 肩は凝るし、夏場は蒸れるし……」
「でも、やっぱりうらやましいですよ。形も綺麗だし」
「触り心地もいいんだよっ!!」
「うわっ! かっ……神無!?」
会話をしていた三人の中に、澪夢の胸を思う存分堪能した神無が、今度は姫乃の胸に標的を移す。
下から掬い上げるように揉み上げられた姫乃の胸は、余計にその大きさを主張した。
「っ……離せ神無!」
「相変わらず凄い重さといい弾力……ん?」
「ひゃぁっ……! くっ……くすぐったい…!」
「んん……!?」
姫乃の胸に飛びついた神無だったが、姫乃の胸を揉みしだいた途端、急に神妙な顔つきになる。
そして、何かを確かめるかのように慎重な手つきで姫乃の胸を触っていたかと思うと、顔を上げて姫乃の顔を見た。
突然、真剣な眼差しを向けられ、姫乃は狼狽える。
「な……なんだ?」
「姫ちゃん……また大きくなった?」
「うっ……!」
「「「「えええっ!!?」」」」
神無の指摘に、姫乃は答えを詰まらせる。
その反応が、神無の予想が的中していることを証明していた。
「おまっ……その大きさでまだ大きくなってんのか!?」
「す……すごっ……」
「わー!! わー!! ちっ…違う!! ほんの少しだ!! ほんの少し!!」
「私の見立てでは、三センチくらいは大きくなってるよ」
「神無ぁぁ! もっ…もう何も言うな!!」
「うっ……うええぇぇぇぇぇ」
「えっ……!? 平賀さんが急に泣き出したんですけど!?」
「なんで!?」
姫乃の胸の成長に驚くメルと志歩。
顔を真っ赤にして珍しく慌てふためく姫乃。
何かをやり遂げたかののように満足気に頷く神無。
今までのやり取りを歯痒そうに黙って見ていたが、ついに羨望の我慢が限界を迎えたふらん。
そして、それに驚く澪夢。
『女三人寄れば
※
「……聞いたか? 湯々爺」
「……
騒がしい女湯とは打って変わり静かな男湯では、男湯と女湯を隔てる一枚の壁にピタリと張り付く二匹の獣がいた。
新鮮な獲物たちの会話を盗み聞きした二匹の獣は、涎の代わりに鼻から大量の血を垂れ流していた。
他に客はおらず、居るのはこの二人だけ。
思う存分『狩り』に集中できると、二人はほくそ笑んだ。
「よし、それじゃあ始めるか」
「御意」
二人は流れ出る鼻血をティッシュで止めると、いよいよと行動を開始した。
もちろん、二人とも全裸で。
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