RE034

 別個体、二柱の人造王樹デミドラシル

 その端末を並べて眺める機会に恵まれた伊月は、今更ながらに気がついたことがある。

「もしかして、主格の自動人形オートマタって王に似せてる?」

 倭式の容姿はそこはかとなく、黒姫奈のそれと。

 扶桑式の容姿はキリエのそれと、両者が徒人であれば血縁を感じる程度、程々に似通っていた。

「はい。明確に定められてはおりませんが、慣習としてそのようになっております」

「何か理由があったりするの?」

「レイシスの趣味」

「あっ、そういう感じ」


 閑話休題。


 八坂の里の元土地神。十年前、やむを得ない事情があったとはいえ、満足な引き継ぎも行わないまま襲へ押しつけてしまった土地神の座に、万難を排して返り咲きたいのだと話す白との、護家八坂の今後に関する諸々の相談事をひとまず終えて。

「さっきの話まとめて、一通り調べておいてくれる?」

「お任せを」

 伊月は息抜きがてら、鞄代わりも務まる便利な吸血鬼へと預けていたゴーグルを取り返し、身に着けた補助端末アクセサリが何かの拍子に外れてしまわないよう位置固定用の限定術式プラグインを起動して、キリエに抱え込まれたままの体を脱力させた。

「それから――」




 実家の一室で体だけはそれなりに寛ぎながら、細々とした頭脳労働を続けるから遠く離れた亜空間。

 ティル・ナ・ノーグの固有領域で、伊月のもう一揃いの五体が動き出す。


「うー……」

 寝台型の〔クレイドル〕から起こした体で、それこそ寝起きのよう大きく伸びをして。のんびりと起き出した黒姫奈伊月は――かこんっ――〔クレイドル〕の脇に脱ぎ落としていたミュールを引っかけ、中庭へ。


「インスミール――」

 足下に描き出された魔導円サークルの輝きとともに、黒姫奈伊月を取り巻く景色が一変する。

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