RE028

 オートマタ、ドォルの区別なく、自動人形できそこないのホムンクルスにとっての心臓部。実質的な魂へ、異能に物を言わせ異物を混入させたのだから、その結果として何かしらの問題が生じて当然と。そういう前提の下、後々〔扶桑〕に対処させるつもりでまずは様子見がてら黒姫奈ドォルを起こした伊月は、補助端末アクセサリ限定術式プライグインを介して動かす義体からだの相も変わらずやたらとしっくりくる操作感に、キリエに抱えられている方の体ではて、と首を捻った。

(思ってたほど……というか、違和感らしい違和感が、ない……?)

 人型端末である黒姫奈ドォルの視界には、その存在自体は誰の目にも明らかな仮想端末バーチャル・コンソールのものとは似て非なる、黒姫奈ドォル本人にしか認識できない表示領域スクリーンのイメージが浮かび上がっている。

 そこには、〔扶桑〕によって観測されている黒姫奈ドォルのリアルタイム、かつ詳細なコンディションレポートが映し出されていた。


 ざっくりとした判定は「問題なしグリーン」。キリエの魂を混ぜたことで転換炉が生み出す魔力の性質にそれなりの変化が認められるが、その影響は今のところポジティブなものに限定されていると、〔扶桑〕は結論付けている。


 そんなものなのか……と、場合によっては黒姫奈ドォルの大幅な改修も視野に入れていた伊月はどこか拍子抜けしたような気分で、自身の手元に非端末由来の仮想端末バーチャル・コンソールを立ち上げた。

「今から黒姫奈このからだの動作チェックしようかと思ってるんだけど。キリエも手伝う?」

 キリエに向かって意地悪く笑って見せながら、〔クレイドル〕を下りた黒姫奈ドォルはガレージ内のシミュレーターへ。

 黒姫奈からの視線が外れた途端、キリエがぐりぐりと批難がましく押しつけてくる頭を、伊月はぽすぽすと軽く叩くようにしてわりとぞんざいに宥めた。

「キリエが手伝ってくれないなら、運動がてら伊月わたし黒姫奈わたしとやるけど」

「私が嫌がること、分かってるんじゃないか……」

 渋々シミュレーターへと向かうキリエの足取りは重く、黒姫奈ドォルの目を通して見るその姿にも、わかりやすく覇気がない。

 そんなキリエを眺める黒姫奈ドォルが、無意識のうち意地悪くほくそ笑んでいることに気がついて。その目を鏡代わりに自身の表情を確かめた伊月は、幼子の容貌にそれらしくあどけない笑顔を取り繕った。

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