24話:指名依頼クエスト『砂漠の臆病者 サンド・ライノスタートルを狩猟せよ!』#4
――エリア9『切り立つ崖の荒れ地』。
「ふぅ、ふぅ……。あれ……?」
この場所にサンド・ライノスタートルが逃走した筈なのだが……。
「隣のエリア8に行ってしまったのか?」
エリア8は大空洞の入り口だ。視界が暗くなるためあまりその場所では戦いたくないな。そう考えながら辺りを見回していると。
「うーんどうも岩の数が多いような気がするんだよな……。俺が戦闘している間に上から落っこちてきたのか……?」
サンド・ライノスタートルが擬態して身を隠しているという考えもある。だが、図鑑にはそのような情報は記載されていなかったからまずないな。
「とりあえず隣のエリアを覗いてみてから戻って捜索するか」
すこし段取りが崩れてしまうのは致し方ないな。ここは臨機応変に動いていくことにしよう。
「まっ、あの堅い甲羅をどうにかするかの為の作戦を考える時間が増えたと思えばいいか」
今後の狩猟を行う上で問題となっていくのはあの甲羅だ。貫通弾をはじくというのは正直に言って驚かされたな。通常弾でも貫くのはまず無理だろう。
「うーんこのシチュエーションをゲームで例えるならマグマ岩竜の甲殻くらいしか思いつかないな」
マグマ岩竜の甲殻はマグマに触れると溶解し、空気中に長時間触れていると硬化するという変わった特徴を持っている事でよく知られている。
コイツから採れる素材は防御職や刺突職ならびに打撃職にとってかなり重宝されており、初期クラスのパーティーメンバーには必ずと言って、そいつの素材を使った防具セットを身に纏ったプレイヤーが散見されていたほどに、そのモンスターは愛されていたのだ。
「サンド・ライノスタートルの場合は亀の甲羅みたいな甲殻を全身に纏っているからな。さっきみたいな威嚇態勢に入られてしまうと柔らかい部分に銃弾を撃ち込むのが難しくなるぞ……」
このモンスターは恐らく二人以上で戦う相手だ。
「カミルさん絶対に今頃はニコニコと笑っているんだろうな……」
カミルさんが提示してきたこのクエスト。間接的にお前の防具を作りたくないという意味あったんだと思う。
「だけどなカミルさん。自分が田舎からやってきたずぶの素人ハンターだとあんたは思ったのだろう。だが違うぜ俺は!」
異世界に転生する前はその道で有名な廃人ゲーマーだったんだからなっ!
「まぁ、対象方法は幾つか思いついたし。あとは段取りを組んでいって旨く事を運んでいくことにしようか」
俺が考えた作戦はシンプルイズベスト。つまり今日まで得た知識と経験を元にできる奴への反撃だ。
「そうとなれば素材を集めることにしようか。あとは……アレを何処かで調達しないといけないな……」
どこかに都合良く粘土がとれる場所があれば良いのだが……。
「水場は確かエリア1だ。となるとそこから調達しないといけないか」
エリア1は『オアシス』だ。そこに行けば粘土があるかもしれない……。十中八九ないと思うが。
「はぁー、粘土爆弾の素材を持ち込んでおくべきだったぜ……」
後悔しても仕方ない。足りない物は全て現地調達だとミステルさんから教わった事だ。教えられたからにはそれ通りに実行して行かないといけない立場に自分はいるんだ。
「よし、気持ちを切り替えて戻りますか」
俺は周囲を警戒しつつ来た道を戻ることに決めた。
「うーん、どのみちあれか。時間が経てばまたサンド・ライノスタートルが姿を現すだろうな」
つまり戻って準備するということは、自然と相手の警戒心を解くことに繋がるという事になるのかもしれないと考えからだった。
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