22話:指名依頼クエスト『砂漠の臆病者 サンド・ライノスタートルを狩猟せよ!』#2
「よし、これで終わりだ……!」
音を立てず最小限の動きで作業するのは緊張の連続だった。なお、今も緊張するのに変わりはないけれどな!
「サンデーがああなったんだから、あそこのホワイエットドラゴンでも有効なはず」
……だといいんだけどなぁ。
俺命名『モンスターの餌』がどこまで相手に通用するかは未知数だ。相手は人食いドラゴンだ。もしかすると、あっちの肉の方がお口に合うのかもしれない。考えていることは気にするな。思い深く考えていたらこれは猟奇的な事を話していることになるぞ俺。
「あとは……そうだなぁ……」
あれの臭いに近づけるのが必要だな……。
「……うん、俺の身体を使ってやるしかないよなぁ……」
命が助かるなら恥ずかしくてもやろう。
--5分後。
「うっはぁ……考えただけでやべぇわ」
今思うと何をしているんだろうかと葛藤する。普通にやっていい事じゃないわ。
「あとはこいつをあのドラゴンに投げつけて反応を見よう」
ただし、こっそりと投げつけてやる。
「よし、いくぞ!」
--ポイ!
「おっ、早速気づいたな」
岩陰から少し顔を覗かせるようにして、俺はボワイエットドラゴンの様子を見てみた。
--グル、グクックン?
「おっ、匂いを嗅いでるな。いけるんじゃね?」
足元近くに落ちたモンスターの餌に歩み寄ったホワイエットドラゴンは、頭を地面に垂れ下げ、そのまま餌に興味を示している。
「あっ、鼻でつついた!」
どうやらホワイエットドラゴンは目の前の物を餌と認識して、生きているのか? あるいは死骸か? といった感じで様子を見ているようだ。さらに、
「おっ、食べて地面に落とした」
いわゆる毒味をし始めた。これはもう完全にこちらの思い通りの展開になってきたぞ!
そしてついに!
「おっし! 食べた!」
--ゴックン。
ホワイエットドラゴンの嚥下する音がこちらまで聞こえてきた。さて、反応はどうだろうか……?
「…………なんか不味そうな感じに思ってそう」
ホワイエットドラゴンの顔がなんとも言えないってな感じの表情を浮かべている。
「はぁ……失敗したかなぁ……」
そう思った矢先。
--クンクン。
ホワイエットドラゴンが何かを嗅ぐ仕草をしている。なんだろう……?
「あっ、飛んだ」
そりゃあ翼が生えているから当然だろうと言われてもおかしな事を呟いてはいるが、何しているか気になってどうしようもないんだ。
--バサッ、バサッ、バサッ。クルゥォ!
「何か旋回して甘え声あげてるぞあいつ……」
まるで親を探す子供みたいな事をし続けているホワイエットドラゴンは、そのまま空高く何処かへと飛んでいってしまった。
「はぁ……助かった……」
なんとか命拾いをしたようだ。
「じゃぁ、とりあえず狩の続きでもしますか」
正直言って精神的にしんどいかな。でも、相手は待ってくれているわけじゃないのでやるしかない。それに。
ホワイエットドラゴンの乱入による影響もあって、おそらく周辺のモンスターは何かしらの反応を示していると思う。
「ターゲットも縄張り荒らされたから何かしらのアクションを起こしていると思うしな」
臆病者でも怒るときは怒るはずだし……。
まぁ、考えいるばかりじゃ何も現実に起こるわけではないので、とりあえず仕事に取り掛かる事にしよう。
「ホワイエットドラゴンか……。俺もいずれあいつみたいな奴らを相手するんだなぁ」
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