第49話 ラピおばちゃんの勉強会だぜ!

 ハンター試験を無事に合格した翌日、朝ごはんを食べた後に2号君改造計画を1人で練っていると、いつものようにジンクが現れた。


「おう、アイアン。なにしてんだ?」

「おう、ジンク。こないだから言ってた2号君改造計画についてちょっとな」

「なるほど、俺も武装ゴーレムの改造計画を早いところ考えねえとだな」

「じゃあ、今日は一緒にそれ考えようぜ」


 俺とジンクが意気揚々とそれぞれの改造計画を考えようとしていたが、そこにラピおばちゃんによる無慈悲な1撃がくわわる。


「さ~って、2人とも、まずは勉強するよ」

「「え~」」

「ほら、さっさと勉強部屋に行く!」


 くっそ~、早いところ2号君達を直したいってのに。俺とジンクの抵抗むなしく、勉強部屋という名の監獄へと今日も入れられた。


「じゃあ、今日はいつものお勉強とはちょっと違う内容でいくよ。その名も一般常識!」


 ほほう、いつもは国語だの算数だのが中心だったから、一般常識とはめずらしい。だが、前世の記憶すらあるこの俺が一般常識程度でつまずいてなるものか! 横ではジンクも涼しい顔をしている。どうやら、ジンクのやつも自信満々なようだな。


「へえ、2人とも自信満々ってかんじだね」

「「おう!」」

「じゃあ、まずは軽くアイアン君に質問よ。この街の名前は?」


 は? 名前? 街は街だろ?


「街!」

「はずれ! 街の名前を聞いてるのに街! って答えはないでしょう。ジンクはわかるわよね?」

「もちろんだ。ダンジョンと工業の街パラージライト、通称パラージだ」

「正解よ。パラージライトって言うのは銀の鉱石の名前なんだけど、それがたくさん取れることからついた名前よ」

「銀・・・・・・、もしかして、ベアリング?」

「ええ、アイアン君も作るのをお手伝いしている、ベアリングのメッキによく使われてるあの銀よ。魔道エンジンなんかで高速回転する部位には必須の材料ってわけね。それから、ダンジョンではミスリルもよく取れるのだけど、その輝きから大昔はミスリルのことを銀の一種だと思っていたらしくてね。それもこみで、銀の鉱石であるパラージライトという名前なの」

「「へ~」」


 へ~、俺とジンクは思わず関心してしまった。銀とミスリルの街か、なかなか工業的な価値の高そうな街だな。


「へ~って、ジンクも知らなかったんだ」

「ああ、銀鉱石の名前ってのは知ってたんだが、そこにミスリルのことまで入っているのは知らなかったな」

「じゃあ次の問題ね。アイアン君、この街の人口は?」

「え~、また俺~?」

「正解したら交代するわよ」


 くっそ~、街の人口か、確か地方のそこそこ大きい都市って話だよな。なら。


「はい、50万人!」

「はずれ! ジンク、正解は?」

「ん~っと、確か20万人ちょっとって話じゃなかったか?」


 20万か、多いような少ないようなだな。日本で言えば、島根の県庁所在地の松江と同じくらいってことか。


「はい、正解ね。アイアン君の50万人はちょっと多すぎだったわね。でも、いまもこの街にはどんどん人が流入しているし、将来的には100万人を目指すっていう方針のようだから、そのうち50万人でも正解になるかもしれないわ」

「なるほどな~」

「じゃあ、次、この街が出来たのは何年前でしょう?」


 いやいやいやいや、街が出来たのがいつかなんて、わかんないぜ。有名な、鳴くよウグイス平安京、とか、なんと綺麗な平城京、あたりはわかるけど、普通知らなくないか? アメリカとかだと、割と歴史が新しいから、みんな知ってたりするのかな?


「難しすぎてわかんないです!」

「そうね、ちょっと難しかったわね。ジンクはわかる?」

「たしか、50年前とか言ってなかった?」

「ん~、正解だけど十分じゃないってことろね。今の街が出来たのは50年前だけど、この地に街が出来たのは大昔、少なくとも1000年以上前からこの地には街があったそうよ。ただ、この街は2人も知っての通り、周辺に強力なモンスターの領域が何個もあるでしょ、上級者ダンジョンとか。そのせいで、モンスターの時代と呼ばれるモンスターが活性化する時期になると、そういう場所から強力なモンスターが出てきて暴れるのよ。そのため、定期的に街を放棄しているの。それで、最後に放棄したのが100年前のモンスターの時代の時で、モンスターの時代が終わってから、この地のモンスターを排除して新しい街を作り始めたのが50年前ってわけ。ちなみに100年前のこの街の人口は40万人だったそうだから、出来るだけ早くそこまでは発展させたいそうよ」


 ふ~ん、そんなの始めて聞いたな。っていうか、問題の難易度が高すぎるだろ。街の名前を知らなかったのは流石にあれだけど、街の人口だの歴史だのは、普通子供は知らないだろ!


「ふむ、ちょっと難しすぎた?」

「うん」

「ああ、母さん、俺もそう思う」

「じゃあ、この国の地理ならわかるかしら?」

「それは流石にわかるぜ。なあ、ジンク」

「ああ、俺はわかるぞ」


 そういうとラピおばちゃんはドワーフの国の地図を取り出した。ドワーフの国は大陸の北西部に位置しているため、当然北と西には海が広がる。そして、南側にはエルフの国が広がり、東側は未開の土地だ。まあ、ず~っと東に行くと、大型のモンスターであるオーガの国があるそうなのだが。


「じゃあ、アイアン君に問題です。この街はどこにあるでしょうか?」


 俺は灰色の脳細胞をフルに活動しこの街の場所を探る。まず、この街は北にダンジョンのある山脈があって、南に大河が流れる。つまり、河と山の間に出来ている街ということだ。俺は大きな河沿いで、北に山脈のある街を探し出す。すると、ドワーフの国の南東にパラージライトの文字を発見した。


「ここだ!」

「はい、正解」

「うおっしゃ~!」

「まあ、街の名前書いてあるから、ちょっと探せばわかるよな」


 くそう、ジンクめ、ここは友の正解を一緒になって喜べよな。まあ、ジンクが正解しても俺は喜ばないが。


「じゃあ次ぎ、ジンクに問題ね。この街がピンチに陥ったとき、どこにどうやって逃げる?」

「それって、100年前この街の住人はどこにどうやって避難したのかっていうことでいいのか?」

「そうよ」

「ふ~む」


 俺もジンクも考え込む。普通に考えたら北から敵が来るわけだから、北は無いよな。東はそもそもオーガの国のある方向だし、未開の地なんだから安全地帯なんてないわけだから却下だろ。ということは、河を渡って南に行くか、西に行くかだけど。西だって牛モンスターなんかの領域なんだよな~。でも、河を越えて南にいっても、河の向こう側って山しかない。ふむ、なかなか難しい問題だな。


「船に乗るか徒歩で西の王都方面に逃げる」

「正解」


 あれ? でもそれじゃあ西の牛モンスターはどうするんだ?


「はい、牛モンスターは?」

「牛モンスターのエリアは当然避けて、道なりに西に行くのよ。道路はモンスターの領域を避けるように作られているからね」


 なるほど、それもそうか。モンスターの領域の中にわざわざ道を作らないか。


「この国の王都周辺は強いモンスターの領域が一切ないから、安全地帯なの。王都も受け入れのために大穀倉地帯になっているから、なにかあったら王都に逃げればいいわ」

「「は~い」」

「それじゃ、今日はこの辺にしましょうか」

「いよっしゃあ!」

「おいおいアンアン、喜びすぎだろ」

「じゃあジンク、2号君と武装ゴーレムの改修案を考えようぜ!」

「おうよ!」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る