スネちゃま②


窓の外の湖では白鳥が優雅な隊列で泳いでいた

ここはパパの別荘

日本のろくでなしの同級生のタケシから国際電話が掛かって来た

「バカンス」

その一言で切った

あんな芋くさいゴリラの声なんてわざわざ異国で聞きたくない

何がリサイタルのお知らせだよ

完全なる気違いだと思った

目が覚めるような思いだった

タケシ

あいつにこれまで遭わされて来た酷い目を思うと自然と涙がこぼれ落ちた

ぶっ壊されたプラモ

「いーじゃん」

その一言で取り上げられ原型をとどめず手元に返って来るのだ

もう二度とあんな日々には戻りたくなかった

(このままこの湖畔でずっと過ごせたなら………)

そのような淡い期待がよぎった

だが願いはあっけなく裏切られた

突如、出現した扉からノビ達がやって来たのだ

「どこでもとびらぁああああ!」

水色の狸が笑いながらノビと部屋に侵入して来てその後ろにはタケシとシズカもいた

おれは早速、警備員を呼びそいつらをぶちのめすことにした

もちろんあの狸が不思議なポケットに手を突っ込む前に、だ

ここは治外法権

テレビ朝日のカメラマンもいやしない

やりたいようにやってやるさ

床に這いつくばりもがく連中を見下ろした

「今日は精一杯やるぞ! 血が飛び出るまでやるぞ!」

自分自身にそう言い聞かせると勇気が湧いた

「なんざますか!!」

ママンが物騒な物音を聞きつけ部屋に入って来た

おれは言った

「………ああ、なんでもないですよ」

返答次第ではこいつも殺す羽目になる


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