放課後の闇


ぶち殺す

わたしの頭の中心で

そんな声が聞こえた

そんな気がした

ぶち殺せば?

もう一人の自分もそそのかす

「ああ」

そして現実世界のわたしもそれに同意を示す

これで多数決は完成された

あとは答えを両手で掴んで設置するだけ

透明な窓があり

その全てが開いてそこから悲鳴が溢れている

校庭に沈殿して溜まっている

わたしは第三者を装い校庭の隅で知らない樹に寄りかかってそれを眺めていた

足元まで辿り着く絶叫

触れたら即、頭のてっぺんまで広がってしまうことはわかっていた

絶叫はわたしの足元にまで近付いて来て

こんな時だっていうのにおかしいのかな?

わたしは空を見上げた

窓から次々と飛び下りて来る生徒たちだった

先生のホイッスルが鳴り響くと今度は違うクラスが飛び下りるようになった

絶叫はわたしの足元でぴたりと止まったままだと思っていた

だが視線を落とすとわたしの靴は既に真っ黒に染まっていた

今は足首の辺りで蠢いている

わたしはふと

(現実ってこんなだったっけ?)

と思った

(あれ? こんな感じだったっけ?)

(これが現実と呼ばれるものの中身だっけ?)

空は夕陽に染まって

このまま夜に突入したらどうなってしまうのだろうと少し考える

考えても答えは見えない


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