ある秋の終わり
二人が破滅に向かっていることを
落ち葉だけが知っていた
わたしは車の助手席から窓を開け
冷たい空気に手で触れた
何もかもがうまくいっているような気がしたし
そんな時はきっと危ないのだろう
後ろで黙っているあいつ
車が揺れる度に真っ暗な場所でごとごとと揺れる
不思議だった
けれどこんなものなのかもしれない
車はコンビニエンスストアで停まった
わたしが降りて弁当と飲み物を買って来た
店員との少しの会話
「あたためますか?」
「いえ、大丈夫です」
いつもの日常がそこにある
車に戻る
何も言わずに走り出した
わたしは口を開いた
「ねえ………わたしたちが捕まったって、きっとその日のニュースぐらいにはなるかもしれないけど、みんなすぐに忘れるね」
「そうだね」
あなたは前を見たまま言った
「自分とは関係のない奴の人生に深く首を突っ込む奴なんていやしないよ、よっぽどそれが面白ければ別だけど」
さらにあなたは続けた
「でもおれたちは捕まるわけにはいかない、何故ならこれはおれたちの人生だからだ」
わたしは頷いた
きっとこれはよくあることだ
だが自分たちがその当事者になることは滅多にない
あなたはじっと前を見ている
それ以外、何も見たくないのかもしれない
わたしはあなたの手にそっと自分の手を重ねた
「大丈夫………きっとうまくいくよ」
あなたは何も返事をしなかった
うんざりしているのかもしれないこの世界の全てにわたしも含めて
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