バー


おれはもぐらと旅に出た

ポーチの中に甘いものを詰めて

それはなんと言うかバーみたいなやつで

食べるとサクサクと音のするやつだった

隙間には空気がいっぱい入っていた

そんなバー

バー

おれの英単語は間違っていないよな?

きらきらとした太陽の下を歩いた

バーを嚙み殺した

一緒に旅に出たもぐらは地中を進んだ

だからおれはそのもぐらを今まで一度も見たことが無い

多分、いる

そのような思い込みによって存在が確立されていた

道には電柱が規則正しく並んでいた

貼り紙があった

『この先、死亡事故多発地域』

かつて頑張れば夢は叶うと言われた少年少女が

空を飛ぶ真似事をして今はそこで横たわっているのだろう

なんとなくそう思った

みんな騙されたのだ

もぐらは毒の染み込んだ地面を突き進み変死

そしておれはそれには気付かずバーを食べ続ける

人生なんてそんなもの

この欠陥だらけの世界に涙なんて一切、似合わない

笑えよ

きみが緑黄色野菜じゃないのならな


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