第4話 高校デビュー女子高生 x 幼馴染の人見知り少女


 ひょんなことから「セックスをしないと出られない部屋」の管理人になった俺。


 今日のターゲットは二人の女子高生だ。

 1人目は、高校デビューして以来カースト上位とつるむようになった女子高生、桐山きらら。

 2人目は、その幼馴染でいつも彼女の後ろについていたが今は疎遠な人見知り、来栖くるみ。



 ククク、若い女同士が欲望のままに繋がりを求める様を存分に見せてもらおうか。


/**********/


 「ん……、ここは?」

 きららが目を覚ますとそこは白い部屋の中だった。

 天井も床も壁も真っ白、窓もない。

 部屋の中に置かれているベッド、冷蔵庫、テーブルも真っ白。

 ガラス張りの向こうのユニットバスもトイレも真っ白。

 ただ、テレビには黒い液晶画面がはめ込まれていた。


 部屋の中にはきららの他にもう一人、俯いて顔も見えないが彼女と同じ制服の女子が俯いて震えていた。

 その女子のおさげ髪をまとめるヘアゴムに見覚えがあった。

 きららが中学生の時に幼馴染の女子にプレゼントした、いちごのボンボンが付いたヘアゴムだった。


「くるみ……?」

 きららが女子の名を呼びと、彼女はビクリと肩を跳ね上げた。

 くるみと呼ばれた少女はますます顔をうなだれて小さく縮こまってしまう。

 きららの記憶の中で、くるみは大人しくていつも自分を頼ってついてくるような女の子だった。

 もちろんきららが声をかけただけで怯えるような関係ではなかったはずだ。

 そう、中学生までは。

 高校に入ってからきららは変わった。髪を染め、流行の化粧をし、クラスの中心なるようなグループに追従していた。

 そんな彼女におとなしいくるみがついてこれるはずもなく、ふたりは次第に疎遠になっていった。


 まさかその間にくるみに嫌われてしまったのだろうかときららは焦る。

 だが、思い出のヘアゴムを彼女がまだ着けていてくれることから、そこまで悪くは思われていないだろうと気を取り直すことにした。


 どうしたものかときららが部屋の中に視線を泳がせると、扉のような枠の上に文字が書いてあるのが見えた。

 そこにはこう書かれている。


『セックスをしないと出られない部屋』


「え、何これ。どういうこと?」

 きららは目を疑った。

 その行為がどういうものかは知っている。

 しかしここにいるのはきららとくるみの二人だけ。

 もちろん、二人とも女子だ。

 女同士でその行為をしろというのだろうか。

 その文字は、この二人に行為をさせる意図をもって記されているのだときららは理解せざるを得なかった。


 そこできららは気付く。

 くるみの耳が赤く染まっていることに。

 きららより先に起きていたらしいくるみもきっとあの扉の上の文字を読んだのだろうと推察する。


 「……困ったね、どうしよう」

 きららは重い空気を換えるように軽い調子でくるみに話しかけた。

 くるみは応えず、赤面してうつむいたままだ。

 再び部屋の中に静寂が訪れる。

 だが、きららは気まずさを感じたりはしない。

 くるみがこういう時に答えるには時間がかかるものだと、知っているからだ。

 きららの語り掛けに呼応してくるみがスカートの裾をぎゅっと握りしめたのが見える。

 そして、くるみが呼吸を整えながら次第に手が緩んでいくのもじっと見守る。

 やがてくるみはしわになったスカートを手のひらで撫でつけて整えた。


 「ごめんね、私のせいで」


 顔は上げず、くるみは囁くように言う。

 やっぱりくるみの声だときららは満足げに微笑んだ。

 くるみは顔を伏せてるが、頭の向きだけはきららに向けている。

 きっとあの扉の上に書かれた文字の事を悩んでいるのだろうと、きららはくるみの頭の中を巡る考えを察した。


 きららが何も言わずにくるみを見守っていると、沈黙に耐えきれなくなったくるみは伺うようにそっと顔を上げた。

 くるみの長い前髪の隙間から潤んだ瞳がちらりと覗く。


 やがて、ふたりの目が合った。


/**********/


 そっ


 俺は指先を添えるように開錠ボタンを押した。


 野暮なことは言わない。

 そのボタンを押すに値する事が起きた。それだけだ。


 充足感に胸を震わせながら俺は手を合わせ、ただ感謝した。

 これ以上介入することも無かろう。

 俺は監視モニターから目を背け、次のターゲットのリストを手繰り寄せた。



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