あやかし特区のワーキンガールズ!

作者 板野かも

66

22人が評価しました

★で称える

レビューを書く

★★★ Excellent!!!

本作は、あやかしである妖怪と人間が共生する新潟県が舞台になっています。
そこでは、あやかしは人間と同じようにたつきを立て、人間と同じように家族や仲間に思いを巡らせます。そして、自分を認めてほしいという思いを心に秘めています。もし人間が妖怪とともに生きたら――というIFストーリーに仕上がっています。

このIFストーリーですが、読み進めていくうちに「IF」とは感じなくなるのです。あれ? 人間と妖怪ってもしかして共生してたっけ? そんな不思議な感覚を覚えるに至ります。それは、本作における描写がいかにも自然であるからだと思います。妖怪だからと奇怪な表現や珍奇な語り方を用いず、作者自身があくまで妖怪とともにタイピングしているような文体に仕上がっています。もともと文章力の極めて高い筆者、この雰囲気をもちこむあたりはさすがと言わざるをえません。

それぞれの章にテーマと目的を配備し、それらを人間主体でもあやかし主体でもなく解決していく語り口はとても読みやすいです。あやかしのもつ課題、そしてあやかしの住む社会の抱える課題はいずれも自然なものとして読者に受け入れられると思います。その意味で、この物語は「IF」でありながらもはや「IF」ではないのです。

ぜひ本作において、IFならざるIFを体験してみてください。それはとても奇妙で、当たり前で、爽やかな体験になると思います。もちろん各章の主人公たちも魅力的な女性で読み応え抜群ですよ! 彼女たちを応援しながら、愉快なあやかしの町をともに探索してみましょう!