火薬屋

創流は"火薬屋"と呼ばれていた。

ベタに言えば裏の世界の人間から、だ。下町で燻っていた無頼者がほとんどである。中には、下町より上にいるものの、北泉総理に反感を持っている者もいる。


そんな者たちに、銃の類を売るのが創流の仕事だ。簡単な爆弾なら創流1人で作れる。用途はいちいち聞かない。だが、テロなんて起こそうとしても失敗するのがオチだと創流自身は思っていた。上の方には、銃や爆弾などの危険物を察知できる機械がそこら中にある。持ち込んだら一発アウト、逮捕されて処刑である。


そんな風に命を落とすのは阿呆だ。創流はだから、テロ自体に参加したことは一度もない。


創流は予め作っておいた弾丸を一緒に持って、依頼人に会いに行った。

同じ依頼人に会うことは経験上3回だけだが、今日で4回目になった。前に小銃を売った相手からまた依頼されたのだ。


「やぁ、生きてまた会えて嬉しいよ」

茶化すように片手を上げると、先に来ていた依頼人は僅かに顔を顰めた。

「お前は相変わらずなんだな」

依頼人は、15歳の少年だった。


2人は、マンホールの下、つまり地下の下水道で会っていた。

昔ながらのこの下水道は下町の住人しか使っていない。だからそんなに汚いわけではなく、こうして密会の場所に使われることが多かった。


「一応俺、君より5歳くらい年上だと思うんだけど」

「敬語を使う相手は選ぶ」

素っ気なく言い放った少年は、切れ長の目でじろりと創流を見た。

「ちゃんとあるんだよな?」

「勿論。品質は保証いたしますよ」

ふん、と少年は鼻で笑った。

この少年は、ずいぶんすらりと華奢な体つきをしていた。最初見たときは、二度と会うことはないだろうと思ったものだが、運が良いのかなんなのか、まだ生きていた。前に見た時より心持ち筋肉がついているように見える。

創流は少年に銃と弾丸を差し出した。少年の名前は知らなかった。少年はただ"便利屋"だと名乗った。

「便利屋どのは一体なんにそんな危険なものを使ってんだ?」

ふと興味が湧いて創流は訊いてみた。

「そんなこと訊くの」

少年は若干驚いたように見えた。

「いや、君みたいに若くて可愛らしいお客は初めてだから」

少年は嫌そうに顔を顰めた。そして、あんたが可愛らしいとか言うと冗談に聞こえなくてぞっとする、と憎まれ口を叩く。

「いやまぁ、答えなくても別に」

創流の仕事に支障をきたすわけではない。

すると、少年はまるで創流を品定めするかのような目で見てきた。

少年の意図が分からなくて、「そんな目で見られると俺、本気になるかもよ」と、試しに言ってみるとスルーされた。

少年は代わりに、銃を仕舞いながら短く答えた。


「テロだよ」

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