No.104 ウソだろ……
授業がなかった昼間にルイとともに池で金の鯉を探していたアメリア。
アメリアが聞いていた噂では夜に現れるとは聞いていなかったので、ルイに言われるまで知らなかったが、教えられた後もアメリアは木の棒で池の底をかき回し、金の鯉を探していた。
これで目を覚まして出てくるかなと期待していたが、現れる気配もなくいつの間にか夕方になっていた。
それでもアメリアは粘っていたが、日が沈んだ頃にルイに「さすがに帰ろうよ、姉さん」と甘い声で言われてしまったため、可愛い弟の言うことを聞いてしぶしぶ帰ることにした。
が。
彼女はこのまま易々とベッドに行って眠り1日を終える人間ではない。
夜、メイドのティナに気づかれないよう自室の窓から外へ静かに脱出し、散歩ついでに白い毛を持つ巨大犬のサンディを池に連れていく怪物である。
「いるかなぁ……??」
うちは池に来るなり八つ橋の上でサンディを休め、あたりを見渡していた。
幸い、他の生徒がいる様子もなく、池にいるのはうちとサンディだけだった。
夜なので結構暗いが月明かりのおかげである程度のものは見えていた。
うちの左には安心したように眠るサンディ、右には水槽。
手には網。
準備は完璧。
今日のサンディの散歩も完璧。
うちは「よしっ」と意気込むと寒さに耐えながらも靴下と靴を脱ぎ、裸足で池の中に入った。
池の深さは昼間に木の棒で確認しており、意外にも浅かったので安心して足を水の中に入れた。
水は自分の膝上ぐらいまであったが、そこが見えていたので恐怖感は特になかった。
さぁあて、金の鯉はどこかな……??
噂によると金の鯉は黄金で光を放っておりすぐに分かるらしい。
しかし、光が弱いときがあるので光が微弱の時もあり、その時は真っ暗な夜でもなかなか見つけづらい。
だから、うちはすぐに見つけ捕まえれるようにこうして右手に網を持っている。
どのくらいの大きさかは分からないが、この網より大きいときは手で捕まえればいいだろう。
そして、うちは右手に持つ網を水につけ、左手でポケットに入れていたライトを持って金の鯉を捜索し始めた。
興味がないのか、それとも寝ようとしていた時に起こされて眠いのかしらないが、サンディはトロンとした目でこちらを見ていた。
その姿がとても可愛かったのでうちのヤル気を上昇し、歩くスピードを上げた。
水の中は空気よりも温かく、むしろ空気にさらされている上半身の方が寒かったが、そこは耐えた。
石の裏や八つ橋の下など池の隅々まで探し回っていると、たまにキラリと光るものがあり、「もしやっ!?」なんて期待しながら近づくとただの鯉だった。
裏切られた気分。
それでも諦めず腰を曲げて探し回っていると、うちの視界に髪のようなものが現れた。
うちの髪??
それにしても長いな……。
……。
うちは顔を上げ、横に顔を振るとうちの長い髪が顔にバシバシと当たった。
あれ??
うちの髪が長い??
しかも、ピンク??
へっ??
もしやと思い、うちはライトを持つ左手を見る。
そこにはいつも肌身離さず小指につけている指輪がなかった。
「ウソだろ……」
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