No.96 違和感

「あー!! いやぁ~、意外と早く来れたなぁ」


「そうですね!! 相手は結構弱かったですね」


「……私は何も言いません。ええ、私は何も言いません」




女性組 テウタ、エリカ、クリスタはドラゴンから飛び降りた後、隠密に行動していたがやはり妖精たちにバレ、戦いつつ逃げていた。

トッカータ王国専属海賊騎士のテウタがアメリアのごとく大暴れをし、光と闇の両方の最強主魔法を持つエリカは抵抗する前にやっつけていた。クリスタはその2人の威力に圧倒され、サポートに回っていた。

今は逃げきることができ、無事オルム島とノルナゲスト島を繋ぐ橋を渡ることができた。

橋の所には兵士がいたのだが、圧倒的オーラを放っていた女子軍団によって倒されていった。

それでも何人かの妖精が追って来ていたので、森に入って彼らを撒いた。

そんな頼もしい女性組に対し、僕らはと言うと……。




「あれが我が国の女性たちか……」


「……テウタさん、やっぱり怪物」


「これきっと全て姉さんのせいですよ」




と好き好きに言い、女性組の後ろを歩いていた。

僕フレイ、ハオラン、ルイはテウタがドラゴンから飛び降りていった後、女子たちの行動に付いて行けれず、数分後にドラゴンから飛び降りた。

それぞれの主魔法を使い降りることはできたものの、女性陣が全て敵を倒していったので、その開けた道を後から付いて行くだけだった。

しかし、橋の所では後ろからも妖精たちがやってきたのでさすがに戦いに参加していた。

森に入ってからはさっき話した通り。

女子が先頭に立って歩き僕らは付いて行っていた。


彼女らはもう王城行く先も分かっているようだ。


ここまで来れば、アメリアとルースに会えるかもしれない。

それはここにいるみんな思っていた。

なんせ1人は世にも珍しいバリア主魔法の怪物、もう1人はヴァンパイアと妖精のクウォーターなのだから。

あの2人ならどんな敵が来てもなんだかんだやっつけてしまうだろう、

と思っていた。


しかし、オルム島に着いても、王城があるノルナゲスト島についてもいない。

姿も見えない、声も聞こえない。

(まぁ、あのアメリアがいればすぐにでも見つけることができるとは思うが……)

本当にどこにもいなかった。


おかしい。


僕はノルナゲスト島に上陸してやっと気づいた。

それは妖精の島には詳しいクリスタも同じ考えだったようで、「王城はこっちです」とテウタに教えていた。

もしかしたら、アメリアとルースは捕まっているかもしれない。

クリスタ曰く、妖精には僕らの魔法をはじく妖精魔法という古代魔法が使えるらしく、アメリアは抵抗したがやられた可能性が高い。


いくら、怪物と呼ばれている彼女でも負ける相手はいるのだな。


僕がアメリアが本来人間だったことを1人で再認識していると、僕たちの横からカサカサという草が揺れる音が聞こえた。

前の方に歩いていたテウタはすぐに方向転換をし構え、彼女にならい僕らも瞬時に敵に対応できるよう構えた。


カサカサ。


来るぞ……。




「あれ??」


「え??」




エリカは現れたものに対し素っ頓狂な声を出す。

僕は前の女子たちによって現れたものが何なのか確認するのに時間がかかったが、それははっきりと見えた。




「ルース??」




その草むらから出てきたのは這いつくばったルースだった。

ルースは安心したようにニコリと笑う。




「良かった。みんな来てくれたんだ」




ルースの顔には少々かすり傷があったが、大きなけがはない様子だった。

相手がルースと分かると、すぐさまクリスタが手を差し伸べた。




「来るのは当然ですよ、お兄様。私は妹ですもの」




ルースは差し伸べられたクリスタの右手を取ると、ひょいっと立ち上がった。




「ありがとう。クリスタ」


「どういたしまして。それでお兄様。アメリア様どちらに??」




クリスタが聞くと、ルースはあたりを見渡し、困った顔をする。




「アメリアは見ていないの?? あ、そっか。海に飛び降りたから会うわけないっか」


「海に飛び降りたっ?!」




ルースの衝撃の発言に僕は驚きの声を隠せず、大声を上げる。

それはみんな同じだったようで、「えっ?!」などの声が聞こえた。

でも、ハオランだけは動揺する様子もなくいつも通り冷静でいた。




「ハオラン、なんでそんな驚いていないんだ??」


「……え。だって、アメリア嬢のことでしょ?? 彼女はバリア主魔法が使えるし、それを使って島から飛び降りたんでしょ」


「今日、僕とアメリア、そして、僕らを助けてくれた妖精は牢屋に捕らえられていたんですが、僕が女王のところに連れていかれていた時、アメリアとその妖精が壁を壊して海に飛び降りたんです」




ルースはハオランの説明に付けたし、詳しく話してくれた。


あーあ。

それなら納得。

彼女ならしかねない。

現にさっきまでそこの3人の女子が似たようなことをしていたし。


僕がハオランの説明にうんうんと頷いていると、ルースは腕を組み、「でも……あれ??」と言い始めた。




「お兄様、どうしたのですか??」


「あのね、僕、昨日アメリアと島からバリア主魔法を使って島からウィンフィールド国に戻ろうとしたんだ……」




昨日……??


フレイは違和感を覚えつつもルースの話を聞く。




「でも、昨日は確か、妖精魔法によってバリアがはられているから無理だってアメリアに言って、実際にやっても案の定、成功しなくて……あ」




ルースは自分で話していて何かに気づいたのか、さっと王城の方に顔を上げる。




「クリスタ……アメリアに会っていないんだよね」


「ええ。探しながらここに参りましたがアメリア様らしき姿はどこにも見かけませんでした」





ルースは数秒黙ると、こちらに顔を向け王城に向かって指をさす。




「アメリアはきっと王城にまだいます!!」




「それは本当なのかい??」




僕はルースの話から大体把握できたが、一応聞いた。




「ええ。本当です。壁を壊した先は崖になっていましたし、そこから逃げれる様子もありませんでした。きっとまだ王城にいます」




バリア魔法は脱出手段に使えない。

だから、きっと、アメリアはこの島にいる。

王城の中にいるはず。




「早くしないと!! 行きましょう!!」




そのルースの声で僕らは王城に向かって全力で走り始めた。

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