No.95 輝きの手
アメリアは強化された相棒のバッドとともに妖精の女王の所に一直線で走る。
それと同時に女王も両手の手のひらから黒の長剣を召喚する。
その剣には鏡のように美しく傷も一切なく、長い間使われていないようだった。
「悪魔さんね……」
先ほどまで冷ややかな表情をしていた女王はやっと笑みを浮かべる。
しかし、その笑みは悪魔のような企みを持つ笑み。
「久しぶりに言われたわ……」
女王も召喚した漆黒の剣の1つを右手に持って前に構え、もう1つは左後ろに構える。
女王は何度も戦ってきたかのように重心を低くし、右足を前に出していた。
こいつ……、剣は傷1つなくきれいだが、間違いなく戦い慣れをしているな。
アメリアは真っすぐに女王に向かって走りつつも、瞬時に相手を観察し、アメリアは敵は決して弱くはないと判断した。
うちは女王の前近くまで行くと、バッドを右に振りかざす。
女王も欠かさず後ろにしていた左手の剣を前に出し、うちに向かって剣を向けてくる。
うちに迷いなく鋭い剣を向ける表情は決して普通の人間の顔ではなかった。
ニヤリと笑い、まるで獲物をしとめようとしているようだった。
まるで狂人だな。
攻撃なところが多く前世が元ヤンだったうちだが、少なくともここまで狂った人ではなかった。
はず??
ヤンキーとはいえども人を殺すなどは一切考えていなかった。
ただ、力を見せつけたかったという子供っぽい考えでケンカをしていただけ。
うん。
うちはこの狂った悪魔とは違うな。
てか、コイツ悪魔だもんな。
「おりゃっ!!!」
カキイィ――――ン。
うちのバッドと女王の黒の剣が交わる。
女王は容赦なく右手に持つ剣もうちの腹に向けていたが、うちは剣が交わると同時に走っていたのを助走にし、女王の右手の剣に向かってドロップキック。
女王はうちのキックに予測していなかったのか、右手が緩み、剣は床に飛んでいく。
「なっ!!」
動揺した女王は落ちた剣に目を向ける。
隙ができた女王に対し、アメリアは空いていた左手を女王の頬をめがけてスイング。
その左手は微量ではあるが、輝きを放っていた。
「さぁ、悪魔よ。出ていけっ!!!」
★★★★★★★★★★
「アメリア嬢……」
僕、ルースは女王に教えられて階段を真っすぐ降り、アメリア嬢とマティアさんがいる牢屋までやってきた。
意外にも牢屋には兵士が少なく、僕は見つかることなくアメリア嬢の檻の前に行くことができたのだけれど……。
「なにこれ……」
アメリア嬢とマティアさんがいたであろう場所はしきりとなっていた壁は壊れ2つの部屋は繋がっていた。
また、豪快に壁に穴というか、壁が壊され、外の景色がはっきりと見えていた。
そのせいか、その部屋の付近では風が強く、少し寒く感じた。
アメリア嬢の姿もマティアの姿もない……。
この壁が壊れた様子から大体予想はつくけど……。
きっとアメリア嬢がこの壁を壊したんだろうな……。
檻のカギは閉まっておらず僕は中に入り、外から丸見えの壁が壊れたところに行く。
下には崖のみで、落ちれば海に落とされること間違いないだった。
アメリア嬢にはバリア魔法がある。
もしかしたら、ゼリー状のバリアでも作ってそれをクッションにして下に逃げたかもな。
この部屋の様子からその方法で逃げた可能性が高いと僕は判断すると、自分はアメリア嬢のようなぶっ飛んだ逃げ方はできないため、女王に言われた通り、まだ下に続いていたあの階段に戻ることにした。
きっと、無事でいるよな、アメリア。
ルースはそう願いながら牢屋の廊下を駆けて行った。
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