No.87 女王様と感動の再会??
「おいっ!! ルースっ!! どこにいるんだっ!!」
うちは必死に顔を檻に寄せて他の部屋を目で探る。
「アメリアの隣。僕も捕まってる」
ルースの声は意外と近く、マティアとは反対側の部屋から声が聞こえた。
ルースは眠たそうな声で話す。
「ル、ルース。お前、裏切ったんじゃなかったのか??」
「なんで僕があんたを裏切らなきゃならないんだよ」
で、でも……。
確かにルースは背中から忍びよりうちに注射器を刺してきた。
記憶は曖昧だが、あのおっさん妖精から礼を受けていたはず。
なのに裏切ってないって。
「んなっ!! お前、うちに注射器を打ってきたじゃねーか」
うちは混乱のあまり静かな牢獄の中1人声を荒げる。
それに対して寝起きなのかルースは冷静。
「僕はきっと操られていたんだよ」
「操られていた……??」
操られていた……??
あのルースの行動は操られていたっていうのか??
一体誰に……??
「アイツらがやってきた時、僕は意識があった。でも、マティアがあのおじさん騎士と戦い始めて僕が様子見をしているうちに意識が遠のいていた。確か意識がぼやっとし始めたのはあのおじさん騎士と目を合わせてからだったと思う。意識が遠くの場所でマティアの戦いを見ていて、アメリアに注射をしているのも遠くの方で……。気づけば、女王様の前で腕を縛られ跪いてた」
なるほど……。
ルースの話からするに妖精兵士がやってきたあの時、隠れてルースの意識操作をするものはおらず、あのごつい妖精のおっさんがルースを操ったのか……。
意識操作の魔法なんて聞いたことがないから、きっとあのおっさんは妖精魔法でも使ったのだろう……。
妖精魔法すごいなっ!!
うちは妖精魔法を心の中で感心する一方、ルースの話を聞いていて疑問に思ったことがあった。
「なぁ、女王ってなんだ……??」
「反人間派の女王様だよ。そして、僕の
「感動の再会じゃねーか。どうだった叔母さんは??」
うちがそう言うと隣の部屋からはぁーというため息が聞こえてくる。
えっ??
うち、なにかした??
うちが首を傾げていると、ルースが感動の再会について話してくれた。
いや、感動じゃないか……。
「あのね、僕、叔母さんと会うの今回が初めてなんだよ。感動もなにもないよ。ただ、『お前がルースか……』と冷たい声で言われて返事して終わり。あの人の圧、怖いったらないね」
おばちゃん口調のルースは怖かったのか怖くなかったのかよく分からないが、ともかく女王が人間のことを良く見ていないのは分かった。
血のつながったルースを現に牢屋に入れているのだから。
ルースは半分人間で4分の1はヴァンパイアだが、それでも残りの4分の1は妖精の血だ。
それでも冷たい対応をするとはよっぽど人間が嫌いなんだな。
うちが妖精の女王を勝手に想像していると、廊下から兵士がやってきた。
なんともない顔でうちの前を通り過ぎ、隣のルースの場所で足音が止まった。
なんだ??
なにかカチャカチャ金属のこすり合う音が聞こえると、キィーと檻の扉が開いたような音がした。
そして、足音がまたし始め、ルースの「なにすんだよ」という声が聞こえる。
「おい、立て」
兵士の冷酷な声が聞こえる。
「嫌だ」
何をされたのか分からないが、その兵士の命令にルースは反抗する。
その後すぐにパンっという音が聞こえ、「いてぇ……」という弱々しい声が隣からした。
「ルースっ!!」
ルースが暴力を振られているっ!?
すると、「わかったよ……」と観念したようなルースの声が聞こえ、2人分の足音が響く。
キィーという檻が閉まる音がすると、うちの前を兵士と腕を縛られたルースが歩く。
「ルースっ!!」
うちがそう叫ぶと、兵士から「黙れ」と叱られた。
檻に顔を摺り寄せ、ルースの背中を目で追いかける。
おい。
アイツ、一体何されるっていうんだ??
嫌な予感がしたうちは頭をフルで動かす。
うちは檻とは反対側の窓が一切ない壁に手を当てる。
この壁……。
もろそうだな……。
うちは拳を握り、壁を前に構える。
精神を集中させ、右の拳に全ての力を集める。
多分、行ける。
行けるはずっ!!!
「おりゃあぁっーーーーー!!!!」
男らしい掛け声と同時にうちの右手の拳は壁に重く当たり、当たった部分を中心にピキピキとひびが入っていく。
これはいける。
もう一発!!!
壁から右手を離し、また構え直す。
右手はそれほど痛くなく、むしろかすり傷に思えた。
「おりゃあぁーーー!!!」
うちはもう一回右手を壁にぶつける。
すると、手が当たった場所から外に壁が崩れていき、外の景色が見える。
うちは目の前に突然現れた景色に唖然として、口をポカーンと開けていた。
「なんだこれ??」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます