No.50 真のファン
「お前の婚約者が攫われたんだっ!!助けに行ってくれ!!」
「え?」
婚約者っ……、アメリア・ホワードのことか?
ミーシャ姉に付いて行っていた僕、フレイはヒラリー姉に突然そう言われた。
「攫われたってどういことですか?」
「今な、テウタからアメリア嬢がサイネリアのアイドル、ナイルに攫われたって連絡が来たんだ。そして、アメリア嬢は船に乗せられているようなんだ」
ん?
「なぜ、テウタさんから連絡が来たんです?アメリアと知り合いなんですか?」
「あ、ああ。私の妹アメリアとアメリア嬢が仲良かったから、それでテウタともな。アメリア嬢は私の伯母の子で従妹でもあるし一番伝えやすかった私のところに連絡が来たのだろう」
「ああ、なるほど。しかし、他国の王族のヒラリー姉はむやみに動けないのですね」
「そうだ」
「ご連絡ありがとうございます。では、すぐに行ってまいります。ミーシャ姉、ありがとうございました」
「ええ。気を付けて行ってらっしゃい」
僕はヒラリー姉とミーシャ姉に一礼するとすぐに走り出した。
偽婚約者とはいえ、アメリア嬢は僕の大切な……、
虫よけだからな。
助けないと。
うん。
虫よけ。
フレイはすぐさま一番近い自国の港へ向かった。
★★★★★★★★★★
「なぁ、ナイル。お前、あの2人に顔見られてよかったのか?」
銀髪の少年は椅子に座り目の前に広がる海を眺めていた。
机を挟み、反対側には萌黄色の髪の少年ナイルが座って紅茶を飲んでいた。
「うん。エリカさんにはどうせすぐに声でバレるだろうと思っていたし、フードしっぱなし変に警戒心を与えるかなっと思ってね」
「ふーん。そうか」
銀髪の少年は机にもたれ肘をつく。
「君はこれからどうするんだい」
「兄上から命令が来ていた」
「なんて?」
ナイルはティーカップを机にそっと置く。
「光主魔法の奴を奴隷にして……」
「エリカさんが奴隷になったら、僕に売ってー。で、そして??」
「アメリア嬢の……」
「アメ嬢の……??」
ナイルは首を傾げる。
銀髪の少年は正面を向き、ナイルの顔を見る。
「記憶を消し名前を変えさせ、俺はアメリア嬢と婚約しろってさ」
バンっ。
ナイルは驚きのあまり椅子を倒し立ち上がる。
「マジ?」
「ああ、マジだ」
★★★★★★★★★★
ウィスタリア王立学園、男子寮。
「お兄様、これをご確認くださいませ」
「うん、分かった」
妖精とヴァンパイアのハーフ、ルースとクリスタは休日にも関わらず仕事をしていた。
すでに家業を本格的に手を出しているこの2人は平日は授業があるため、休日にほとんど仕事をしていた。
両親ももちろん働いていたが、ハーフの2人の方が有能だったため、学園に来る前もよく働いていた。
そして、学園に来てからもバリバリ仕事をしていた。
休日は2人ともルースの部屋で引きこもっていた。
そんなに仕事をしているのはなぜか……??
それは助けてくれたアメリア王女のため。
商売仕事しながら、いい薬がないか探していた。
また、アメリア王女が回復した時に仕事環境を良くしておきたいというものもあった。
そして、今日もアメリア王女のために仕事をしていた2人だったが……。
「ん?」
「お兄様どうしたんですか??」
「フレイ王子からだ」
「えっ?」
ルースのパソコン画面にはフレイと書かれたスカイぺが起動していた。
「ちょっと出てみる」
「はい」
ルースはボタンをクリックしフレイとスカイぺを繋いだ。
「どうも、フレイさん。どうしたのですか?前に勧めていた妖精産商品が欲しくなったのですか?」
『……どうも、ルース。うん、違うよ。ちょっとお願いがあってね』
「お願い?なんです?」
ルースは首を傾げる。
『ナイル・ディレクションについて調べてくれる?』
「あのナイル・ディレクションにですか?」
『ああ』
「ナイル様ですかっ!?」
椅子に座っていたルースは後ろを振り向くとたくさんの書類を抱えたクリスタが画面を覗き立っていた。
「殿下だったのですね。あ、私ならナイル様のこと知ってますよ」
「……お前はファンとしてだろ」
「フフフ、お兄様私をなめてますね?」
「え?」
すると、クリスタは見たことない笑み、悪魔の笑みとしていた。
これ、もしかして……。
真のファンの顔?
「ナイル様のあれやこれについて知っておりますよ」
『例えば?』
画面越しのフレイはクリスタに尋ねる。
「フフフ……」
「えっ、こわ」
「ナイル様は裏の仕事に今だ手を出しておりますよ」
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