No.48 助けてくれっ!!!

「フレイくん?」


「あ……」





僕はミーシャ姉に話しかけられるまで意識が完全に飛んでいた。





なにを思ったんだろ……、アメリアは重度のやまい

そんなすぐに会えるはずなんてないのに……。





「フレイくんっ!?」


「はい……??」





突っ立っていた僕のところまで歩いてきてくれたミーシャ姉は驚いた顔をしていた。





え?





視界が少し歪む。

頬には涙が流れていた。





「フレイくん……」


「あ、大丈夫なんで……」





僕はすぐにハンカチで涙を拭き、ミーシャ姉に笑顔を見せる。





浮かれた僕が悪かったんだ。





僕が微笑むとミーシャ姉は苦しそうに笑っていた。





「少し話そうか……」





フレイとミーシャは先ほどまでミーシャがいたガゼボの所にある椅子に座った。


僕の正面にいるミーシャ姉は真剣な顔でこちらを見ていた。





「フレイくん……、ごめんね。裏切るようなことをしちゃって」


「いいえ……、浮かれた僕が悪いんです」


「これ……、このいたずらね、アナ姉のなの」


「やはりですか」





ミーシャ姉と分かった瞬間、だいたい予想はついていた僕は苦笑いをする。





「うん……、あとねこれはアナ姉の最後のいたずらなの」


「え?」





左斜め下を見つめるミーシャ姉はさらに険しい表情をしていた。





























「アナ姉、ホワイトネメシアの王子と婚約してすぐに結婚するの」


「えっ?」





★★★★★★★★★★





「ん、んあ」





ここはどこだ……??





目を開けると、前には金属の壁があった。

はっきり見えるようになると、壁だと思っていたものは天井だと分かった。





室内……。

うちはどこかの部屋で寝かされているのか……。

それに、

床が少し揺れているように感じる。





アメリアは体を動かそうとするが、やはり動くのは首と顔の筋肉だけだった。

隣を見ると、必死に動こうとするエリカがいた。

目には涙を浮かべている。





「アメリア様……、目をお覚ましになったのですねっ!!」





エリカはうちと目を合わすとパッと笑顔になった。





「おうぇ、えあいうおうぁ」


「へ?」





チッ。

しゃべらしてもくれねーのか。

赤ちゃん言葉とか恥ずかしすぎだろ?





「アメリア様……、もしかしてお話しすることが……」





ああ、そうだよ。

しゃべれねーんだよ。

さっき、

『おまえ、下手に動くな』

と言ったんだがな。





「不得意になられたのですか?」





うーん、合ってもなくもないけど……。

それはどうでもいいんだよ。





うちはとりあえず首を横に振る。





「えっ、違う?うーん、ならば私とお話ししたくなくなったんですかっ?」





違うっ!!


うちは首をブンブンと横に振る。





「えっ!?それでもない……。私分からないです……。答えを教えてくださいませ」





バーカっ!!

教えれるかっ!!

このドアホっ!!





アメリアは首をエリカとは反対方向に向ける。





「えっ!!アメリア様こちらを向いて、答えをお教えくださいませっ。私、そちら側に行くのには少しお時間がかかりそうで……」





エリカはまるでとんでもない重力がかかったようにゆっくりと動いていた。

ほんとうにゆっくり、スローに。




はぁーー。

エリカコイツに頼ってもよくなさそうだな……。




アメリアはもう一度室内をよく観察する。





全て、金属……。

それもキレイなもの。

さっきもナイルの奴のせいか分からないが、テレパシーは使えなかった。

ここは金属で全てできているが、テレパシーは使用可能か?





アメリアは少し考えると、意識を集中させた。





少し体力は食うけど使ってみるしかない。






アイツに伝われ……。






『助けてくれっ!!!』






★★★★★★★★★★





トッカータ王国、レグルス港。





「あの箱はあっちに持って行ってくれ」


「了解です!!姉さんっ!!」




レグルス港は今日も晴れ。

とても仕事のしやすい日であり、気温もちょうど良い。

アイツらよく動いてくれるな。


彼女はいつもどおり部下たちを指示しつつ、状況がどうなっているか確認していた。





「頭領、あれどうします?」





長年ついて来てくれているおじさん、ロウはさきほど港についた箱を指さす。





「ああ、あれはあそっ……」





『助けてくれっ!!!』





えっ?





「どうしたんです?頭領?」





頭領である彼女はフリーズしていた。





あの人の声……。
























『テウタっ!!!!!!』





アメリアの声だ。





目を見開き止まっていたテウタはテレパシーが来ているであろう方向にすぐに顔を向けた。





「何だいっ!!!アメリアっ!!!!」





テウタは大声で叫んだ。

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