No.19 弟は悪魔

「はぁ……ここがホワード家??」


王城より小さいが、それでもやはり大きな屋敷が目の前にあった。

「さすが公爵家」といえる門が構えていた。


「ええ、そうです。さぁ、ご挨拶にいきましょう」

「ああ」


うちとティナは馬車で玄関付近まで行くと、降りた。

降りると、ダイアナ伯母さんと伯父さん、それにうちと同じくらいの少年がいた。

その少年の顔に非常に見覚えがあった。

会ったことあるっけな??

少年は赤毛で後ろの一部分だけ髪が長く、そこを三つ編みにしていた。

この世界にきて初めて見る髪型だな……。

でも、両親と違う髪色だけど、遺伝しなかっただけか??

それとも??

と自分だけの世界に行きそうになっていると、ダイアナ伯母さんが話しかけてきた。


「アメリア、お疲れ様。さぁ、中に入って」

「……あ、ありがとう」


何かしでかしたら、ダイアナ伯母さんに怒られることは重々承知であるため、少し緊張していた。

うちはダイアナ伯母さんに案内されるままに付いて行った。

案内された部屋に入ると全員ソファに座った。

うちとダイアナ伯母さん、向かいに少年と伯父さんという位置になった。


「アメリア、そんなに緊張しないで。今日からここがあなたの家だから」

「は、はい……」


と言われましても。

鬼伯母さんがいるとね……。

いくらうちでも怖いんですよ。


「ええと、私はもちろん、ハリー伯父さんのことはわかるわね??」

「うん」

「それでこの子があなたの弟になる……」

「ルイ。ルイ・ホワード、姉さんよろしく」


ルイという少年は輝きすぎて直視できなくなるような笑顔で答える。


「よろしく」


うちらは数分話すと、疲れがあるだろうと思ったのか、部屋で休みなさいと言われた。

伯母さんの言うことを素直に聞き、内心喜んで部屋に戻っていた。

それは決して顔には出さなかったけれど。

じっとしてるかって??

そんなわけなかろう。

自分の部屋の窓を開けると、窓の外に足を出す。


「アメリア様!! 何してんですかっ!! ここは2階ですよっ!!」

「アイツが待ってるだろ」

「だからといってそこから出る必要ないですよ」

「ここから出る方が最短距離だから、じゃあ」


うちはティナの忠告は無視して飛び降りる。


「もう!! アメリア様っ!!」


2階からは怒ったティナの声が響ていた。




★★★★★★★★★★




「ごめん。待たせたな、サンディ」


2階から脱出したうちはホワード家の敷地内にある小屋に来ていた。


「ワンっ!!」


そこにはサンディが待っていて、うちはこれでもかとワシャワシャと撫でてやった。

サンディは一足先にホワード家に来ており、世間にはアメリア王女が買っていたムーンライトをホワード家が買った、というふうに知られていた。

このサンディのための小屋はいつも清掃されているのか、林よりだいぶ綺麗であった。

しかし、サンディは寂しかったのか、かまってくれと言ってるかのようにうちにすりすりとしてくる。


「へぇ。姉さんってこの犬と仲がいいんだね」


振り向くと、全開していた扉の付近にうちの弟となったルイがいた。


「そうだな。どうした?? うちになにか用か??」


ルイが来たと同時に普段は大人しいサンディが唸っていることに気づいた。


「あ、お前。サンディと仲良くなりたいのか??」


そう尋ねると、ルイがはぁーとため息をつき、「そんなわけないでしょ」と言う。


「そんな凶暴犬誰が好むの。僕は姉さんにお願いがあってきたんだ」

「なんだ??」


すると、ルイはニヤっと嫌なことを企んでいるかのように笑った。

悪魔のように。


「姉さんにはその犬をつれてどっかに消えてほしんだ」






「はぁ?? なにいってんの、お前??」

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