第10話 ドワーフの女の子

 チームしらかば連合に入って、翌日からテトリー、あずみん、みけここと俺の4人のパーティがほぼ固定され、あと一人はチームから誘うというのが形となった。みんな社会人でインする時間もほとんど同じだったので、強ボス以外でもよく遊んだし、会話もたくさんした。

 共通の話題も多くあずみん以外は、おそらく歳も近かったんだろうと思う。ただ美しい外見のあずみんだが、話し方は普通のおっさんであった事に、ずっと違和感を感じていた。そして、4人の時はほぼ6割が下ネタであったが、俺は嫌いでもないので、それはそれで楽しかった。


 ただ、半年を過ぎた辺りからテトリーのイン率が突然悪くなり、レベルやスキル上げも遅れ始めていた。あずみんに理由を訊くと、

「テトさんは、FFがキャンペーンをやり始めたので戻っている」

 と言っていた。

 しばらくは3人でパーティーを組んでいたが、あずみんも突然インしなくなってしまった。これもどうやら、テトリーに誘われてFFに戻ってしまったとの事だった。


 テトリーとあずみんがインしなくなり、俺とみけここは自然と2人で遊ぶようになった。強ボスをやる時は、足りない人数を補充しなければならず、結局オートマッチングと同じような形になってしまい効率が悪かった。

 そしてみけここは、正直そんなに上手くないにも関わらず、結構パーティ内で指示を出したりするので、よく他のメンバーと揉めた。


 俺は、みけここのこういう所は逆に可愛く感じていて、守ってあげなきゃいけない気持ちになっていた。そして、揉めた後にキツイ事を言われて落ち込んでいるのを必死にごまかそうとして、言い訳している様子も好きだった。

 

 しかし、チームリーダーのテトリーのいないチームは開店休業状態のようになってしまい、メンバーは次々と抜けていき、やがて俺とみけここと、おそらく引退してしまったであろう空っぽのアバター数体になってしまった。


 ある日、大空に浮かぶ空中庭園に囚われている女王ヒナを助けに行くストーリーで、ラスボスが非常に強かったので(その後のアップデートで弱体化したが……)、みけここから手伝ってほしいと言われた。俺は彼女とパーティを組んで、両翼の付いた飛行艇に乗って空中庭園に向かっていた。


 その移動中、飛行艇のデッキの上で、

「テトさんとあずみんはもう戻ってこない感じ?」

 とみけここに訊いた。


「うん……」


「みけさんは、FFに戻んないの?」


「私、あんまりアクション得意じゃないからFFは難しくて……、やってる時間もないしね」


「まあ、そうだね。ちょっと難易度高いよね」


「うん、そうですの……」


「……チームもう終わりにしようか。もう2人しかいないし……、みけさん副リーダーだから解散する権限あるでしょ。それで、2人で他のチームに行こうよ」


「でも……、まだ戻って来るかも知れないからこのままにしときますの」

 この時、俺とは違いみけここは彼らとの付き合いも長いので、これ以上は言えなかった。


 そうするうちに、俺はクラブハワイの準備が忙しくなってきて、みけここともあまり遊べなくなっていた。

 しかも準備の都合で、クラブオーナーのアカツキの作ったチームに、少しの間入らなくてはいけなくなり、みけここのいるチームを抜ける事にした。


 ある日、チームを抜ける事を、みけここに報告すると、

「えっエルさんまでいなくなったら、私遊んでくれる人いなくなっちゃいますの……」

 と、心配そうな様子で、みけここは言った。


「大丈夫。今まで通りフレとして遊べるよ」


「寂しいから、いやですの……。エルさんと一緒がいいですの」


「……うん、この間話してたクラブハワイの準備に、チームで活動した方が効率良くてね。一応オーナー補佐だしさ、俺。落ち着いたらまたこのチーム戻るから……」


 それでも俺は、みけさんの寂しそうな様子に後ろ髪を引かれながらもチームを抜けた。


 そして、いよいよクラブハワイの開店が迫って来ている時、少し前には気付いていたが、ある日からみけここは、ゲームにインしなくなっていた。


 途中一度だけインしていたあずみんに、みけここの事を尋ねたがFFに戻っている訳でもないらしかった。


 ――このGOCではインしてない時の表示として、普段使う不在マークの他に、勉強マーク、仕事マーク、寝てるマークを選択できるようになっている。みけここのマークはずっとベットで寝ている姿だった。


 クラブハワイも始まって落ち着いてくると、しばらくの間、みけここがインしていないかチェックしていた。


「もう、起きないのかな……」

 この時、僕の耳の奥では、SEKAI NO OWARI の眠り姫が聞こえていた。

 


 俺は相方というものは作らない主義だったが、みけここだったら、相方になっても良かったなと思っていた。



 ……しかし、それからみけここが起きる事は二度と無かった。

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