第6話 クラブハワイ

 そして、アカツキと共に、カレルンの丘にあるクラブハワイまで瞬時に飛んだ。


 クラブハワイは、カレルンの丘の上の一番海岸が良く見える一等地にある。おそらくこの住居地カレルンの丘の20ある区画の中でも一番人気であろう。

 少し後に、アカツキから聞いた話だが、この場所を確保する為に、土地の開放日の開放時間の6時間前から並んだそうだ。

 そして、後の話になるが、俺がクラブサントリーニを作ろうと決意した時、このカレルンの丘の同じ場所を狙って、俺も6時間並ぶ事になる。



 クラブハワイ前の大きな庭に着地すると、目の前には、真っ白なお城のような建物に、センス良くカラーリングが施され、大きな門の上には、でっかい電光掲示板に『クラブ ハワイ』というサイン文字が光っていた。


「わぁ……、すごい」

 俺は、思わず感嘆の声を上げた。

 

 ――このGOCでは生産職で生産した物や発掘された物を使い、それを組み合わせる事で、色々な物を作ることが出来る。物を作るのは手工業ギルドにいるNPC(自分やその他のプレイヤーが操作しないコンピューター上のキャラクターの事)で、先程話した木家具職人や裁縫職人、鉱石加工職人、そして最近のアップデートで新たに加わった機械器具職人と雑貨職人に、製作するための材料とこの世界の通貨であるガルド(単位G)を渡して作ってもらう事になる。GOCが始まった当初は作るのにリアルな時間が必要であったが、ある時期のアップデートの改良で、製作に時間が必要がなくなり即渡しとなった。


 クラブの中に入ると、店内には派手なミラーボールが天井からぶら下がりソファーがきれいに並んでいる。そして、最近のアップデートにより機械器具職人で製作することが出来る事になった室内用のロボットが、指定された通路をウェイターのように動き回っている。そして、中央には大きなステージだ。家は5段階まで拡張できるが、4,5段階目は課金となる。この家は5段階の最大まで拡張されており、室内は圧倒的な広さだ。


「アカツキさん、凝ってますねー。これは凄いわ」


「ありがとうございます」

 アカツキはうれしそうにお礼を言うと、一番奥のテーブルのソファーに座る。その仕草はマーフォークならではの優雅なものだ。

 

 俺は店内を一通り見て回っていると、アカツキが、

「後は、一応給料なんですが、1回の出勤で『バイグラの葉』を30枚です」

 と言った。


「あー、はい」

 俺は、別にそれには全く興味が無かった。この時点では、俺の気持はもう決まっていた。


「それで、他にご質問ありますか?」

 アカツキが訊いてきた。


「凄い興味あるんですけど、入ったら時間的なノルマとかあるんですか? 俺、家庭持ちで……時間に制約があるので……」

 俺がそう尋ねると、

「自分もサラリーマンで家族持ちだからそんなに無茶な事はしませんから」

 と、アカツキは言った。


「あっ、それは良かったです」


「うんうん、ダンスの練習とかステージでやる余興については時間がある時に集まってやりたいですけど、クラブへの出勤は土曜の夜だけですので……、それも時間がある時だけでいいですよ」


「じゃあ、ぜひ入りたいです。どうすればいいですか?」


「面接するんですが、ここまで、エルさんの言動を見てましたので、もう合格です」


「あっ、ありがとうございます」


「じゃあもう少しメンバー集めますので、集まったら連絡しますね、フレンド登録してもいいですか?」


「ぜひ、お願いします」


「では……」


 これが、俺のナイトクラブのオーナーへの一歩となった。そう言う意味ではアカツキさんはこのGOCの中では恩師と言えるのかも知れない。


 ただ、今後この『クラブ ハワイ』を巡る権力争いや、それが、ゆくゆくはアカツキさんへの悲しい出来事に繋がっていくことになろうとは、この時の俺は知る由もない……。








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