第19話 有名ブロガー

 GOCの攻略ブログで圧倒的な人気を誇っているのが、『ナインセブンの11PM』で知られたナインセブンのブログだ。11PMという名称は、俺の世代では分からないが、知る人からすれば、セブンさんの年齢層が高いのは分かるらしい。昔やってたちょっとエッチなテレビの番組名だそうだ。しかし、後日、彼と仲良くなってから、この11PMの意味を訊いてみたが、どうやら昔やってたそのテレビ番組の事ではなく、ブログを始めた頃は午後11時に更新していたからという事だった。


 さて、この『ナインセブンの11PM』は、マーフォークのイケメンでありながら、どこか3枚目なナインセブンの、どちらかと言うと失敗談が多めな、おもしろくて楽しめるブログである。GOCのブログランキングでは、毎回3位以内に入っている超人気ブログで、公式(運営のブログ)からも一目置かれている。


 ある日、ナインセブンがブログに載せる記事の為、『クラブハワイ』でホスト体験をさせてくれと頼みにやって来た。俺とアカツキは喜んで歓迎をしたが、ユメノアルバは、反対をした。ナインセブンのブログの事を彼は知っていて、ふざけた感じになるのが嫌だというのがその理由だった。

 ただこの時は、俺とアカツキの意見が通って、体験が認められた。しかし、体験と言ってもいい加減な接客や、余興をやってもらっては困るというユメノアルバの強い意見で、事前にしっかりと練習してからという条件付となった。


 そして金曜日の夜、今日はアカツキがリアルな仕事の都合で不在だったので、俺とユメノアルバはクラブハワイの前で、ナインセブンを待っている。


「……いきなり遅刻ってどうよ? エルさん」

 ユメノアルバはもう機嫌が悪い。……ただ、俺も内心ヒヤヒヤしている。


「そうですねw」

 これが今の精一杯の返事だ。


 そして、待ち合わせの22時を10分程過ぎてナインセブンがやって来た。


「すいません、ちょっと急用が入っちゃって……。ごめんちゃい」

 謝り方も軽い。ブログ通りの人だな――と、この時、画面の向こうの僕は笑っている。

 しかし、これは明らかにユメノアルバの嫌いなタイプの人間だ――瞬時にそう思った。

 案の定、ユメノアルバは怒り心頭だ。

「遅刻してきて、そんな謝り方はないんじゃないの? 有名人だか何だか知らないけど……」


「――まぁ、まぁ、アルバさん。今日はブログで紹介してくれる人だからさ」

 俺がそう言うと、少し間をおいて、ユメノアルバから個人チャットが入る。


「ごめん、エルさん。俺、この人苦手だわ……。今日の練習任せていい?」


「うん、いいっすよ」


「じゃあ」

 そう言って、ユメノアルバは何も言わずにどこかへ飛んで行ってしまった。



「さて……、セブンさんで良い? 呼び方」


「うん、それでオッケーすよ。……それにしてもあの人、怖いねw」


「ふふふ、そうだね。……それにあの人は時間にうるさいからね、気をつけてねw」


「あら……、それは本当にごめんなさい」


「ウンウン」


「あの人がアカツキさんですか?」


「いや、ナンバー2のユメノアルバさん」


「そっか……、アカツキさんじゃなくて良かったw」


「うん、アカツキさんは温厚な人だよ」


「うんうん。途中途中で、スクショ(スクリーンショット――画面の画像を撮影する事)撮ってもいいですか? ブログ用に」


「うん、いいですよ」


「ありがとう♪」


「じゃあ、接客からやりましょうか? お店入りましょう」


 始めは、おちゃらけた感じだったが、流石にブログを毎日のように更新している人気ブロガーだ。練習をし始めると真面目に聞いて真剣にやっていた。今日はダンスまでは教えるつもりは無かったが、ぜひ、と言って来たので一通り練習をした。結局、予定の12時を回って1時までやった。


「すいませんね、エルさん。付き合ってもらっちゃって」


「いや、いいですよ」


「でも、楽しいね。GOCの全く新しい楽しみ方だね、これは」

 なんとなく、ナインセブンの興奮が伝わってくると俺も嬉しくなる。


「これを明日、客の前で見せた後に歓声受けると震えるよ」


「へー、味わってみたいですね、その感じ。……ブログだとリアルタイムな反応が分からないんですよね」


「うん、うん。このクラブ始めたのも、お客さんを喜ばす事だけじゃなくて、クラブのメンバーが楽しめて始めて成功だっていうのが、アカツキさんの考え方なんだよ」


「おおー。感動しました、その言葉。頂戴しますね」

 そう言って、彼はメモをする絵文字を出している。


「ふふふ、じゃあ今日は終わりにしましょうか」


「はい、長い時間ありがとう」


「うん、じゃあ、明日は22時からですので、よろしくお願いします」


「あい、こちらこそ。よろしく」



 これが、俺と近い将来、莫逆の友となるナインセブンとのはじまりであった。



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