第9話 イグジットでチームを探す

 10月も終わりに近づいた土曜日の夕方、窓越しに見える外の景色はすっかり秋模様に変わりつつある。

 実家から遊びに来ている義理の母が嫁と子供2人を連れて大型ショッピングモールに買い物に出掛けて行ったので、帰ってくるまでの2時間ほどの間、僕は悠々自適にGOCをプレイしている。


 来週に迫ったアップデートでは、スマホのアプリ実装の他にもストーリーの進展や、新しい強ボスの登場など目白押しだ。新しい強ボスを倒して新武器獲得への好ダッシュを決める為には、そろそろチームに入った方が良いと思っていた。その為、昨日から掲示板を見ているがこれといったチームが今のところない。


 俺は、ゲーム中のチームの募集者が集まる炭鉱の町イグジットに行ってみることにした。


 日中なので、それほど人は多くなくまばらだった。それでも、チームへの入会者募集や、チームの紹介を募集する人でエリア専用のチャットは流れている。

 俺はイグジットの街の中央にある噴水広場で佇んで、流れているチャットを眺めていた。

 前回の事があるので、今回は相方とかそういう面倒な事がないチームを探そうと考えている。やはりマーフォークである以上そういった恋愛沙汰には巻き込まれ易いので注意が必要だ。


 流れるチャットを見ながら噴水の周りをブラブラしていると、半裸で真っ赤な図体のデーモンの男、マーフォークの女、ドワーフの女の3人組が目に入った。


「チーム立ち上げメンバー募集中です! FFから流れてきました!」

 3人はコミカルな動きをしながら叫んでいる。


 FFというのは「光のお○さん」でも題材になっている多分、あのゲームだ。

 実は俺もFFから流れてきた1人だが、あれは時間に限りのある子持ちのリーマンにはキツイゲームだった……。この時は、ただそれだけの事だが、妙に親近感が湧いた。

 しかし、チームをこれから立ち上げるという事は、経験値取得量の増加等チームレベルによる恩恵がないという事になる。これは結構なハンデだ……。


 俺が、彼らの近くで悩んでいると、マーフォークの女が俺の所に色気のある腰付きで近づいてきた。女のマーフォークはスタイルが良くて綺麗系だ、かわいい系のフェアリーとは系統が違うがモテ人気は二分していた。


「チームお探しですか?」

 その時、マーフォークの男女が並ぶとさすがに見栄えがするな、と思った。


「いや、何となくぶらっと……」

 俺は、少し警戒する様子になりながら答える。


「チームは入ってるんです?」


「いや、……入ってないです」


 すると、今度はドワーフの女子が近づいてくる。

「うちに入ってみないですか? 体験もできますの」


 これで、俺は2人に挟まれた格好になった。でも、体験か……、それも悪くないな――そう思い、

「今、チームは何人いるんですか?」

 と訊いた。


「今6人でさっき3人入ってくれたから今9人ですの。とりあえず10人集めて始めようって、テトさんと話してるんですの」

 さっきからこの娘が話してる『の』ってなんだろう? ドワーフ語か? 

 ただ、このドワーフ女子は、ドワーフというキャラにも関わらず精いっぱいのかわいさを追求していて愛らしさを感じた。話し方も含めてプレイしている人のセンスの良さを感じる。


 すると、マーフォークの女性がテトさんと呼ばれているチームリーダーを呼んだ。

「テトさん、入ってくれそうだよ」


 えっ、俺、何にも言ってないけど……、


「おー、やったぜ」と言って、赤い大きな体が、俺の所にダッシュでやって来た。その動きでこのデーモンの男の底抜けの明るさを感じる。


「えっと、チームリーダーのテトリーです。そしてこのマーフォークがあずみんさん、そして、ドワーフの……」


「――みけねここって言いますのー」

 そう言って、可愛らしくダンスをしている。


 ふむ、まあ、いいか。嫌なら辞めればいいし――僕はそう考えて入ることにした。


「エル・スタークって言います。エルと呼んで下さい」


「よろしく!」


「では、10人揃ったので一度みんなで集まろうかと思うんですが……今日の夜って時間ありますか?」

 テトリーが訊いてきたので、

「はい、10時以降ならインできますよ」

 と返事をした。


「じゃあ、その頃声掛けますね」


 そして、その日の晩、夜10時を回った所でテトリーから連絡が入り、新しく出来たチームアジトへと飛んだ。

 アジトは、デーモン族のリゾート地として、序盤のクエストの時に随分苦労したヴォルケーノヴィレッジ(火山村)と呼ばれる場所にあった。名前の通りのイメージで、いかにも落ち着いて眠れそうにない場所だ。


 俺が家に入ると、テトリーを中心にして、メンバーは円を作る様に座っていた。そして、順番に簡単な自己紹介をしてからチーム『しらかば連合』が発足した。この日は割と長い間話したが、中でも一番女性的なしゃべり方で、美しいマーフォークのあずみんの中の人(プレイヤー)が最近薄毛に悩む40歳を超えたおじさんだったという事がわかったのが、今後の収穫だった。ちなみに、みけここは、普通のOLだと言ってたのでおそらく女性だろう。


 そして俺は2つ目のチームに入る事になった。このチームでも結局、短い期間となってしまったが、印象的な女性との出会いにより、俺の記憶に残るチームとなった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます