第3話 チームに入ってみる

 さて、プロローグでも話したようにこのGOCの強ボスコンテンツはチームの仲間と攻略したほうが確実で早い。オートマッチングで知らない人同士だと強ボスに合わせた職業も選べないし、慣れてない人が入る可能性も高い。少ない時間で、良い武器やアイテムを手に入れる為には、強ボスを効率よく倒していかないと出遅れる大きな要因となる。


 俺はGOCを半年遅れで始めたので、どこのチームにも属さず、しばらくはみんなより遅れているレベル上げ、スキル上げに集中していた。


 そして3か月程経過して、そろそろレベル、スキル共にカンスト(和製英語のカウンターストップいわゆる上限に達しているという事)した職業も増えてきたので、チームに入ろうと思い探すことにした。 


 ――チームを探す方法は、ネットの攻略ページの募集掲示板や、ゲーム中の掲示板、それに、チーム募集をしている人が集まる場所にいって見つける方法があった。


 俺はまず一番利用が多いであろうゲーム中の掲示板で探すことにした。掲示板は町や村の役場に行けば見ることが出来る。役場の機能についてはまた説明するが、ここで土地を買って家を建てたりする事も出来る。


 さて、チームを探すのに気を付けなければいけない事は1つだ。それは厳しいノルマがあるようなガチチームは止めておくという事だ。32歳で子持ちのサラリーマンだ、無理は出来ない。睡眠は必要だ。


〈生産職で毎日、チームに30kg納品ノルマ。強ボス退治は1日5回以上……〉

 これこれ、こんなチームは俺には無理だ。これを毎日3時間かけてはやれない。


〈新コンテンツが開放した日は24時間インしてください。職はこちらで指定〉

 まじか、これは……。


〈まったり仲良しチームです。相方を見つけたい方もどうぞ♪〉

 相方っていうのがちょっとひっかかるが、これくらいで妥協しておくか。


 ――さて、こういったMMOにはよく「相方」と言うものが存在する。これは、ボーイフレンドや、ガールフレンドに近いものもあれば、彼氏、彼女にまで発展している場合もある。当然、画面の向こうの人とプレイしているアバターが同姓とは限らない……、おっさん同士でキャッキャッやってる事もありえるのだ……。(実際これについてはおもしろい経験をしているが、ここでは文字数が多くなってしまうので後日話すとしよう)

 俺はモテ枠のマーフォークの為、相方を探す女子からの人気も高く、そういった誘いも実際今まで多かった。

 しかし俺は、相方というのは作らない主義だ。画面の向こうでイチャイチャしているところを嫁に見られたらと思うと、想像するだけで怖くなる。まだリアルな不倫の方が、男としてはカッコいいだろう。


 チーム『アスナロ』のリーダーは、俺と同じくマーフォークのイケメン。特にチームの内容を細かく確認したわけではないが、そこそこ大きくもなく、小さくもない手ごろなチームメンバーの人数が気に入っただけだ。特に厳しいノルマもない。

 

 入る時に、チームリーダーのハヤブサキッドとの面接があった。


「こんばんは、エル・スタークさん」


「こんばんは、よろしくお願いします♪」

 ここは、爽やかさを表す為に音符マークを付けておこう。……最初が肝心だ。


「エルさんは、相方いますか?」

 いきなり、ど直球な質問だな、と思いながら俺は返答をする。

「相方は作らない主義です。既婚者なので……」


「ははは、なるほど」

 どうやら回答は正解なようだ。


「じゃあ、合格です。これからよろしくお願いします」

 相方の確認――それだけかい! 俺は心の中でツッコミを入れる。


「ありがとうございます」

 そして、俺は無事にチームに入ることが出来た。


 翌日の晩、俺がゲームにインすると、突然個人チャットが飛んできた。


「エルピョン、今ヒマ?」


「エルピョン?」

 なんだ、コイツ……

 名前を見ると、ミズキ……

 チームのメンバー欄に早速目を通す。

 そうか、副リーダーで女か、一応気を使っとくか……


「はい、何でしょう?」

 無難な受け答えだ。


「強ボスのクラーケンキング一緒に倒さない? 今日ドロップ2倍だし……」

 そうだった……。今日はキャンペーンで『武器の欠片』2倍ドロップの日だ。


 ――この強ボスコンテンツでは、ボスを倒すと『武器の欠片』というものが手に入るのだ。これは強い武器を作る為に必要な素材で、これを集めて強い武器を作り、武器レベルを上げていくというのが戦闘メインでこのゲームをやっているノーキン(脳みそ筋肉)連中にとって一番重要な事だ。


 ふむ、どうしよう。今日は金策の発掘も2倍キャンペーンをやっているのでダイヤを掘りに行こうと思っていたが……。

 まあ、しょうがない。


「はい、いいっすよ」

 ちょっと軽めの返事をしてみる。


「じゃあクラーケンキングの塒≪ねぐら≫前で集合ねー」


「はい、了解です~」


 さて、クラーケンキングか……。今日はこれやったら終わりだな。ハイボールを1本空にしてから、イーグルの羽を使って、強ボスのねぐらに向かう。


 そこには、さっき俺を誘ったミズキに、チームリーダーのハヤブサキッド、風の又三郎、ケロケロケロッピがいた。ミズキは予想した通り、このゲームの可愛い子ちゃん枠のフェアリーだ。しかも普段着装備もお洒落でゴージャスだ。ケロケロケロッピはおっちょこちょい枠(俺が勝手に思っているだけだが……)のドワーフで外見装備は名前の通りカエルっぽくしている、風の又三郎は、デーモンだった。


「よろしくお願いします」

 ここは、新人らしく丁寧な挨拶を心がける。


「はーい。エルピョンお願いねー。あー、やっぱりカッコいいねえ」


「いえ……」と言いながら〇ボタンと△ボタンを押して、ジャンプアタックをして格好よく着地してみる。


「きゃー、かっこいい」

 ミズキが〇ボタン連打でぴょんぴょん跳ねている。


 その時……、何か俺の防衛本能が反応する。

(……気のせいか、誰かの厳しめの視線を感じたような気がしたが)


「よろしくねー、エルさん」

 ケロケロケロッピは、優しい感じがする挨拶だった。


「お初ですー。よろよろー」

 風の又三郎は、軽い感じだ。


 ……ん? チームリーダーからの返事がない。

 この時はそれを気にする余裕もなくパーティに誘われる。


「エルピョン、アタッカーなんか出来るのある?」

 パーティチャットに切り替わって、ミズキに訊かれた。


「武士か忍者ですかね」


「忍者出来るんだぁー、すごっ!」


「いやあ」


「じゃあ、忍者よろ」


「了解!」


 そして、パーティ編成が決定した。


 薬師  ハヤブサキッド

 魔術師 ミズキ

 騎士  風の又三郎

 武士  ケロケロケロッピ 

 忍者  エル・スターク


 回復は薬師だけか……僧侶無しのかなり攻撃寄りのパーティだ。ただ、ハヤブサキッドが上手ければ、これは相当早く倒せそうだ。俺は忍者なので装備は紙みたいなものだが、攻撃力は一番で、今回の中心的なダメージソースとなる。

 そして、あと3回ボスを倒すと、忍者の新武器『佐助の小刀』を作る素材が全て集まる。


「よし、イカキングたおすぞー」

 ミズキがそう言うと、クラーケンキングに戦いを挑み、戦闘が開始された。



 そして、俺にとって、まさに試練の戦いが始まるのだった……。

 

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