クラブサントリーニへようこそ 

浅見とも

第1話 プロローグ 前編

 今、目の前に美しい海岸線が広がる高級リゾート地カレルンの丘の上に立っている。夕陽が海に沈んでいくこの時間帯、丘の上から見るこの景色は絶景だ。

 

 俺は、この丘の上に建っているナイトクラブ サントリーニのオーナー兼ナンバーワンホストのエル・スターク。スターク家の跡取りでもなければ、落とし子でもない。(〇ーム・オブ・スローンズより)

 

 サントリーニは、常時18名のホストが待機し、在籍28名。おそらく、このオンラインゲーム最大のナイトクラブである。ホストしかいないクラブであるが、ダンスやショーなどの娯楽要素もある事などから、ナイトクラブとしている。


 街から遠く離れた島のリゾート地にあるが、ストーリーの前半を攻略している時に、一度船に乗って着いてしまえば、後はイーグルの羽を使って「カレルン!」と唱えれば、どこからでもひとっとびだ。ちなみにこのイーグルの羽は一度手に入れてしまえば、何度使っても無くならない。どこかのゲームの『あれ』とは違うものだ。


 ナイトクラブ サントリーニは隔週土曜日の22時~25時に開店している。週の始めには、イベント掲示板とブログでも今週の開店予定を案内している。


 クラブを開店する日は1時間前から行列が出来るほどの盛況だ。多い場合は30~40名ずつ1時間で交代してもらうという事で対応している。

 閉店している時でも、このクラブの建物の家主でもある、俺がいるときであれば相手をする。そして、その中には個別で相談に来る客もいて……、まぁこの個別相談でちょくちょく事件に巻き込まれるのだが……。

 全盛期は毎週営業していたが、今はリアルな事情もあり、……隔週にしている。その事情とは……、追々分かってくるだろう。

 



 さて……、では、俺のスペックを簡単に説明しよう。

 まず、身長201cm、年齢は23歳。職業はホスト……ではなく、公式的に言えば、騎士、武士、僧侶、魔術師、忍者といった戦闘の職業と発掘者、農民、釣り師といった生産の職業を状況によって使い分けている。ホストという職業は……残念ながらこのゲームには無い。


 戦闘レベルはどの職業もカンスト(和製英語のカウンターストップいわゆる上限に達しているという事)、武器は常に最高級の物を使っている。そして、全ての戦闘技を使いこなす。生産職は1つしか選べないので、今は金塊等を掘って金策する発掘者としてレベルをカンストしている状況となっている。


 種族はマーフォークと言って見た目は背びれの付いた魚人。今まではこのゲームで唯一のイケメン枠の種族だった。他の種族としては、デーモン、ヒューマン、ドワーフ、フェアリーが存在しているが、最近のアップデートで、エルフというとんでもないイケメン枠の種族が出来てしまった。しかし、転生するのに実質課金5千円を払わなければならず、余程イケメンになりたい奴以外は、さすがに簡単には手が出ない。


 ゲームを始めて3年、俺はマーフォークのイケメン騎士、イケメン魔術師、時にはイケメン僧侶として、超絶強ボスを倒さなくてはいけない時のパーティーでは、常にお呼びのかかる存在となっている。


 そしてイケメンを演じる以上、かっこ悪いところは見せられないプレッシャーを常に感じながらプレイしている。その為、今までも夜な夜なオフモードにして、インしている事を隠しながら強ボス攻略などを猛練習することがあった。……まぁ、必死に練習する姿をフレ(フレンド)に現場で見つかってしまうと、超かっこ悪いのは、あるあるな話だが……。



 ――さて、聡明なみなさんはそろそろお気づきかと思うが、俺エル・スタークは、今流行りの異世界に転生しているわけでもなく、何か頭や手足に機械を付けるような仮想現実大規模多人数オンラインと言われるVRMMOと言う類のものでもない。昔から広く遊ばれているコントローラーとキーボードを使った普通の大規模多人数同時参加型オンラインと言われるMMORPGの中のアバター(ゲーム中の自分の分身)だ。

 


 ここで簡単にこのMMORPG『ゲーム・オブ・クリスタル』通称GOCの内容を説明しておこう。


 ――このゲームは、日本の有名な製作会社が運営をしており、3年経った今でも常時40万人以上プレイしていると言われている大人気のMMORPGである。激しいアクション操作があまり必要ないので、女性や中学生から中年までの幅広い世代のプレイヤーがいるのも特徴だ。


 通常のストーリーとしては、全世界を、悪の枢軸レッドバロン卿とその配下3魔王、そして最近のアップデートから登場した竜王から守る為に12個のクリスタルを求めて、時には船に乗り、時には両翼の付いた船を操作して空を飛び空中庭園に囚われた女王を救出しに行き、最新のアップデートではいよいよ地中に潜り、地下帝国へ行くところまできている。ここまでに見つけ出したクリスタルは8個、そのうちの1個は悲しい出来事によって割れてしまっている。今の所、この割れたクリスタルがどうなるかは謎だ。さらに通常のストーリーから派生するサブストーリーも当然ある。


 そして、ストーリーの進行によって、開放されていくコンテンツというものを攻略していくのが主になる。このコンテンツのメインとなるのはパーティーバトルで、さきほど話したような超絶強ボスを倒すために時には何日もかけて、挑戦しなくてはならない。


 パーティーは全然知らない人とオートマッチングして戦うのと、仲間内で戦うのと、仲間内でパーティーを組んで足りない人数分をオートマッチングで補充できる3通りある。やはり、仲間内で練習しながら戦った方が早く攻略できる可能性が高い。


 仲間――そう、その仲間を作る為に、ほとんどのプレイヤーはチームに所属したり、自分でチームを作ったりする。もちろんチームに入る理由としては、戦う為だけではなくチームチャットといわれる仲間と話がしたいだけの人もいる。遊び方は人それぞれだ。


 実は俺も最初の頃は、チームに入らずに主にオートマッチングでやっていた。……しかし、それにはすぐに限界を感じた。これはチームに所属して、一日中インしているような強者の力を借りたほうがいいと思い、チームに入ることにした。


 チームを探す方法は何通りかあって、ネットの攻略ページの募集掲示板や、ゲーム中の掲示板、それに、チーム募集をしている人が集まる場所が決まっていて、そこにいって見つける方法があった。


 ……俺もチームに入り、いろいろな体験をした。この体験談は、これからゆっくり話をしていくことになるので今回、チームの話はここまでにする。



 さて、ここまでが、僕のアバターであるエル・スタークの説明である。

 そして、これから書いていくのは『俺』すなわちエル・スタークと、『僕』すなわち森嶋亮介自身が体験したリアル、非リアルな世界での物語である。 


 次回プロローグ後半では『僕』、森嶋亮介自身の説明をしていこうと思う。

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